【#101】「もみ殻」・「もみ殻くん炭」について!二つの違いとは!?学術論文を元に理解する!
この記事のポイント
  • 籾とは,何も加工していない状態のイネの果実.
  • C/N比が高く分解しずらい,土壌改良剤での利用が適している.
  • くん炭にすると,保水性も上がりケイ素の成分も野菜に効きやすくなる!

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

本日は「もみがら・籾殻くん炭」についてお話ししていきたいと思います.
土壌改良には,籾殻を使った方が良いよ!とよく聞くと思いますが,その籾殻とは一体何なのか?そして,本当に効果があるのか?そして効果があるとしたらどのような効果があるのか?どのように使っていけば良いのか?その辺りを解説させていただきます.
痒いところに手が届くようにと,今回もかなり論文を探しました!

では,家庭菜園をされている方や,ちょっと使ってみたいけどよく分からない!という方には特におすすめだと思います.
ご参考になれば幸いです.

籾殻とは!?

まず,について説明いたします.
籾というのは,簡単にいうとお米のことなのですが,厳密には殻がついた状態の,稲の果実に相当する部分ですね.
私たちが普段食べている白いお米,白米は,玄米を精米した状態ですね.
この玄米に,殻がついている状態のことを籾と言います.

けんゆー

玄米にするためには,脱穀と籾摺り(もみすり)ということを行うよ!

つまりまだ何も加工していない状態のお米ということですね.
ちなみに,籾を漢字で書くと,米篇に刃と書きます.
漢字の成り立ちは,米に刃のような鋭い殻がついているから,という理由から来ております.

籾殻というのは,この籾についている殻のことを指します.

窒素・リン酸・カリウム成分含有量

さて,気になる成分含有量なのですが,

・窒素:0.32%
・リン酸:0.03%
・カリウム:0.31%
・カルシウム:0.008%
・マグネシウム:0.071%
・C/N比:70~90程度.

農研機構さんの「バイオマス成分データベース」を参照しました.
C/N比は測定する資材によってバラツキが多少ありますが,いろんな資料を参照すると,大体70~90程度です.また,驚くべきことに,C/N比91.6というものもありました.
これは,「籾殻の炭水化物組成(そせい)と土壌中での微生物分解に及ぼす炭化処理の影響,日本土壌肥料学会,柳田友隆,1996」という文献から参照しました.

C/N比とは炭素分と窒素分の比で,有機物の分解のし易さを間接的に示しているのですが,詳しい説明は,#32「C/N比とは?」をお聞きください.


しかし,このC/N比90という数字はものすごく高い数字です.
この籾殻の主成分は,セルロースやリグニンといった難分解性の有機物であるため,とにかく分解が遅い有機物に分類されます.
けんゆー

20を超えると高いと言われる!


参考までに,ススキでも大体60程度です.

成分に関してですが,これもなかなか低いですね.
やはり,白米の部分にはデンプンが,そしてそれを包むぬか層(玄米)にビタミンやミネラルをはじめとした栄養成分が豊富に含まれております.ここを米ぬかとして利用しているのですね.
詳しくは#28「米ぬかとは!?」をご覧ください.

籾殻の方を,肥料分を期待して入れるというのは,おそらく効果がかなり薄いと思われます.
肥料などを畑に入れたい場合は,緑肥作物を入れた方が良いですね.
大体籾殻の10倍の含有量はがあります.
クローバや,レンゲ,ダイズなどですね.

しかし,籾殻はケイ素(シリカ)が約20%も含まれており,野菜がこのケイ素を吸収すると,茎や葉が丈夫になり,病害虫への抵抗性が上がると言われております.

では,具体的に,籾殻を入れると,どのようなことが起こるのか?ということをお話ししていきます.

籾殻の利用目的

籾殻の利用についてですが,大きく分けて3つの利用方法があります.
一つはそのまま使用する方法,もう一つは燻して(いぶして)炭にして使用される方法,これはもみ殻くん炭とも呼ばれます.そして最後は,堆肥・ぼかし剤を作る際に一緒に活用するという方法(副資材)の,3つがあります.
それぞれ,解説していきたいと思います.

生で使用する場合!

そのまま活用したい場合は,土の中にすき込み土壌改良をするという方法と,そのまま土の上に撒いて,マルチとして活用する場合があります.

土壌改良としての利用ですが,籾殻はC/N比が高く,分解が進まないということと,軽量で,通気性・透水性が良いという特徴を活かして,水はけの悪い粘土質の土壌の,土壌改良剤として使用できます.

炭化:籾殻くん炭としての利用

炭化処理をすると,籾殻の物理性や化学性が変化します.
まず,物理性というのは,単純な重さや保水性などを指し,化学性は,pHやEC(電気電動率)などです.

物理性に関しては,炭化すると多孔質の形状でカサ密度が1.5倍程度に上がり,水分を保水できる量が3倍程度に上がります.そのため,排水性に加えて,保水性を改善できる土壌改良剤として利用することができます.
1994年に書かれた「籾殻の理化学性に及ぼす炭化処理の影響」という論文があるのですが,そこでは,土壌改良剤として利用する場合は,半分程度の炭化割合がちょうど良いかもということが書かれています.
論文では,炭化割合としては40.3%でした.

炭化してない状態だと,籾殻の撥水性により,水を弾いてしまい保水性が十分ではないが,半炭化だと濡れやすくなり,保水性が上がるということです.
一方で,炭化割合が80%以上のものを活用すると,C/N比が10~20程度さがり,分解もしくは形質の崩壊が起こりやすく,長期間安定した状態で使用することが難しいということです.
また,籾殻の持っている有機物の成分も,炭化することによって抜けます.
デンプンの量も半分に,糖も半分以下に,炭水化物は1/3程度になります.
また,セルロースやヘミセルロースの繊維量ももちろん減ります.

けんゆー

炭になる前も元々,窒素分などはとても少ないですけどね.

化学性に関しては,炭化をすると,pHが6.8から10程度まで上がります.
つまり,籾殻くん炭はアルカリ性を示す資材になります.
土壌改良として,酸性土壌を少し中性側に寄せたいという場合でも活躍します.

土壌改良をも目的とする場合は,半炭化の状態で,ある程度,なまの籾殻を残すと良いということですが,一方で,100%炭にした方が,野菜の生育に良好であったという結果も出てる論文があります.
これは,「籾殻燃焼灰の農業への有効利用,2019」の秋田県立大学の論文ですが,ここでは,水稲(すいとう)と玉ねぎで調査されております.

籾殻くん炭の割合を0%,20%,40%,60%,80%,100%で使用して,調査をしたところ,くん炭割合の多い100%の方が,太く長い苗になったという報告がなされております.
これは,根が十分に張りやすくなったということと,籾殻くん炭から可溶性のケイ素がよく効いたのではないかと言われております.炭化することによって,カサ密度が増え,そしてケイ素がうまく溶け,植物に吸収されやすくなったということですね.

堆肥やぼかし剤として

籾殻や籾殻くん炭などは,それ自体に肥料成分等は入っていないですが,その形状や有機物としての特性から,堆肥やぼかし剤を作る際の副資材として一緒に活用されることもあります.

どのような効果が期待できるかというと,

  • 脱臭.
  • アンモニア発生量の抑制.

一番の理由は脱臭です.匂いの吸着によって,堆肥にする前のナマモノ(牛糞など)の臭さをある程度抑えます.
(参考文献「堆肥化時の臭気抑制および発酵促進に効果的な副資材の検討,2017」)
参考文献では,籾殻くん炭を使用してます.
また,アンモニアの発生量も抑えられたということが報告されています.これは窒素分の抜けを抑えると同時に,近年問題になっている温暖化などの対策にもなりえます.環境を汚さない持続可能な資材作りというのも現在は求められるのかなと思います.
また,籾殻くん炭を使用した堆肥を使っても,植物の発芽に影響がないことも調べられております.

最後まで読んでいただきありがとうございました.
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