【アボカド栽培35】アボカドの収穫後品質の話.腐敗とか炭疽病とか次亜塩素酸水.
この記事のポイント
  • アボカド,収穫後黒くなるのは,3つの原因がある!
  • 炭疽菌に対する理解と,最近の科学をする!
  • 対策方法について知る!

けんゆー

今回はオンラインサロンのちょっと学術的な内容からお送りします!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

本日は,アボカドの収穫後の品質や,炭疽病,そしてその対策などについて共有していきたいと思います.
ちょっと学術的な要素強めです.こういった記事はオンラインサロンに書いてるので,気になったら購読よろしくです!

アボカド果実,収穫後品種の話.

スーパーでアボカドを購入して,追熟を経て,いざ食べよう!と思い切ってみると,中が黒くなっていることって多々あると思います.
今回の話題は「選び方のコツ」とかそういうものではなく,そういった黒くなる問題として,そもそも科学的にはどのような対策があるの?という話をしたいと思います.
選び方のコツは以下をどうぞ!

今回参考にする論文はこちらの論文です.
Extension of Avocado Fruit Postharvest Quality Using Non-Chemical Treatments
(非科学的処理を使用したアボカド果実の収穫後品質の拡張)

けんゆー

ググって読んでくれ!

すぐに食べられるアボカド需要の増加!?

本論文によると,現在は世界的にも「追熟を待たずにすぐに食べられるアボカド」の需要が高まってきているといいます.
アボカドは,性質上,クライマクテリック型という収穫後,5~6日追熟させて食べごろを迎えるという果実になります.なので,店頭で購入後,自宅で3~6日程度熟させて食べるというスタイルが一般的です.

しかし,追熟の過程で,部分的に腐食するものなどもみられ,消費者さんの中には,購入を断念する人が多いのも事実で,そこでスーパーマーケットなどは,すでに食べごろで,品質が十分に確保されたものを並べるお店が増えてきているということです.
ただ,その場合は,従来の価格よりも30%程度,高価になるということが言われます.

けんゆー

それでも,腐って台無しになるよりはマシですね.

なぜ腐るのでしょうか?

追熟の仕方は悪くない,果実生産時,収穫後の障害による問題が大きい.

では,消費者の保存・追熟の方法が悪いのか?と言われると,実はそうではない場合が多いです.きちんと常温で保存しているのにも関わらず,一部腐敗が確認されたり,酷い場合は,全て腐敗するという場合が多いのです.

<主な原因は以下です>

・生産時の炭疽菌の付着 → 追熟時に発症(今回の話題).
・輸送時の温度障害 → 食べるときに発見.
・輸送時の機械的損傷 → 大体は破棄される.

以下問題になっている原因を深掘りして紹介し,本論文で記載のあった面白そうな代用品を紹介します.

炭疽菌やその他病害虫に関わる防除と世界的な動向.

Effects of Treatment with Electrolyzed Oxidizing Water on Postharvest Diseases of Avocadoより画像引用.
(炭疽病は,収穫直後(A)はわかりにくいが,熟すと確実に分かる(B).果肉も腐敗症状が見られる(C).)

炭疽菌やその他病害虫を防除するために,様々な農薬が使用されます.(国内のアボカドに関しては,現在,害虫は20,病気は4つに対して登録農薬があります.)

ただ,本論文によると,アボカドに対する殺菌剤は腐敗進行を止めると同時に,アボカドの細胞膜をも破壊し,酵素プロセスを不活性化,呼吸を含む重要なエネルギ生産を妨害してしまうと言います.

また,殺菌剤は通常,作用機序が特異的であるため,標的になる病原菌(真菌)の遺伝子構造の小さな変化により,一部の集団が耐性を獲得することが認められております.

さらに,殺菌剤は潜在的にも使用者(生産者であり消費者ではない)に対して発癌性を誘発させる危険性があり,持続的ではないことが指摘されております.

そのため,長期的な栽培を実現するためにも,現在なされている化学的防除以外に,代替されるその他の防除方法が求められております.

品質を保持する面白い代用品.

本論文で紹介のあった面白い技術は,酸性電解機能水(EOW:Electrolyzed Oxidizing Water)を活用する方法です.次亜塩素酸水とも呼ばれます.収穫後の病気や,アボカドの病害虫防除のため,有望な代替品の一つです.

細菌,ウイルス,真菌,および原生動物に対して非常に殺菌性であることが報告されており,合成化学物質および従来の塩素ベースの消毒剤の代替品となる可能性があります.
(塩素濃度によってはコロナウイルスにも有効であると,経済産業省が発表してます.)

EOWをアボカドに散布することによって,炭疽病の発生率が12~35%ほど減少したことが報告されてます.
論文は「Effects of Treatment with Electrolyzed Oxidizing Water on Postharvest Diseases of Avocado(アボカド収穫後の病気に対する,酸性電解機能水による処理の影響.)」ですね.

食の安全,もしくは,作業者の安全,さらに,収穫後の腐敗を防ぐためにも,こういった技術がより発展して,十分活用されることが期待されますね.

輸送時の温度障害.

輸送時には,CAコンテナで,コールド便(5~12℃程度,酸素2~5%,二酸化炭素3~10%)で送られてくることが多いのですが,大量の運ばれるという事柄,局在的に冷えすぎる箇所と,温まりすぎる箇所というものが存在します.
(CAコンテナというのは,Controlled Atmosphereの略.温度,二酸化炭素,酸素濃度を調整して青果物を運ぶコンテナ.)

この大量輸送が後の温度障害につながります.
冷凍障害やソフトランディング問題がかなり問題になってます.ソフトランディングとは,輸送・貯蔵中に果実が早熟し,市場に出るときにすでに柔らかくなっている問題です.

こういった輸送時の個数の管理などは,現在,世界的にも課題になっている部分があります.
効率化が進められてますが,障害で出るような輸送は,どうなのかな?と思うところも存在します.

また,現在,収穫後果実品質を保つための技術としては様々なやり方が紹介されてます.

その他の予防法

■「1-MCP(1-メチルシクロプロペン)」
植物成長調整剤の一つで,輸送中の熟成を抑えるものです.呼吸を減らし,ソフトランディングを減らします.

■熱処理.
38℃の熱処理も効果的だと言われます.
初期および中期の不均一な成熟を大幅に抑制できます.
これはマンゴーでもなされている技術ですね.

マンゴーの炭疽病について!

僕たちの圃場で収穫したマンゴー,リリー種,夏雪種に炭疽病が出てしまいました.
糸状菌「学名:Colletotrichum gloeosporioides (Penzig) Penzig & Saccardo」が原因で発生する病気ですね.
果実中に,黒褐色の斑点がポツポツと発生し,次第に大きく拡大します.
このくらいだと食べることができるのですが,放っておくと,果肉部分まで進行して腐敗します.

発生しやすい条件としては,密植栽培により風通しが悪い圃場や,台風の通過後などですが,台風の後,ちょっと怖いですね.
炭疽菌を死滅させるために,例えば,収穫後は熱湯につける処理(50℃20分程度)をして水道水冷却をするとある程度抑えられると言います.(僕らは使いませんが,現在,マンゴーへの登録農薬はキャプタン水和剤というもので防除します.)
マンゴーだけではなく,実は多くの熱帯作物につく炭疽病ですが,なかなかこういった問題は大きいですね.

■低温貯蔵(5~13℃)
収穫後の品質を保持するための技術で,最も活用されてます.
細胞代謝,植物の老化促進を抑制します.
ただ,氷点下に晒すと,細胞の壊死,不可逆的な損傷が生じます.
ハス種は6℃までが限界のようです.

■その他
他にも,シリコン剤や,植物ホルモンのジャスモン酸,エッセンシャルオイルなどの利用も試みられており,品質保持に貢献しております.

まだまだ完璧に収穫後腐敗の問題が解決されたわけではないですが,きちんと使える技術は活用し,輸送方法も検討してもらって,輸入アボカドも美味しく召し上がりたいところです.

学術的な要素が強めな内容は,よくオンラインサロンの方に書いております.
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