【#109】有機物マルチの抑草効果.どの資材が優れているのか!?野菜の生育への影響は!?
この記事のポイント
  • 有機物マルチは,素材によって雑草抑制効果が異なる.
  • ヒノキやスギのように強い雑草抑制効果を示すものもある.
  • ノシバやネズミムギのように雑草抑制効果がほとんどないものもある.

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

本日は「有機物マルチの素材別の雑草抑制効果」についてお話したいと思います.
みなさん,マルチは活用されておりますか.
野菜を作る上では,今では必要不可欠な存在になりましたね.
マルチというのは,作物の株元を覆ってあげて,土壌の乾燥を防いだり,地温をあげたり,泥はねを防いだり,雑草の抑制や肥料の流失を防いだりと,多くのメリットがあります.そんな野菜を栽培する上で,欠かせないマルチですが,現在は,色々な材料がありますよね.

例えば,ポリビニールマルチを使用されている方や,刈り取った雑草を活用する草マルチ,竹や木材を細く裁断したチップ,他にも,米ぬかや籾殻を使用される方もおりますし,中には,新聞紙を活用されている方も見ました.他にも畳とか,色々なものがマルチとして使われているわけです.
本日のお話は,有機物マルチに焦点をあてて,どの有機物資材が,雑草の抑草効果が高いのか,ということについてお話ししていきたいと思います.
家庭菜園をされている方や,ポリマルチ以外のマルチをご検討されている方,有機栽培・自然栽培をされている方のご参考になれば嬉しいです.

本日のお話は,「現代農業の2021年5月号」の伊藤幹二さんの書かれた記事を参考にしてます.
この方はNPO法人緑地雑草科学研究所のご所属ですね.
素敵な資料をありがとうございます.

有機物マルチについて.

現在は特に,世界的にも脱プラスチックという働きかけが強くなっている昨今で,農業界で主に使用されているポリマルチを他のものに代替して環境負荷を減らそうとい動きになっております.
国内でもそういった動きが見られ,最近,山梨県では,ポリマルチなどの廃プラの回収袋が50円値上がりになったようですね.
農家さんの負担になります.

というのも,やはり,ポリマルチなどは,楽で使い勝手が良い反面,プラスチックゴミになってしまうのですよね.
一部再生処理されているものもありますが,100%ではないのですね.

一方で,今回取り上げる有機物マルチは,使っているうちに分解され,自然と土に還っていくのですね.
作物を作り終えても,回収が不要でありますし,分解の過程は,微生物や土壌動物などが行いますので,土が肥えていくというメリットもあります.
しかしながら,ポリマルチに比べて,雑草の抑制効果が低いということや,地温がなかなか上がりにくかったり,また泥はねを確実に防げるかというところが課題になると思います.

で今回は,この有機物マルチの雑草抑制効果を見ていきたいと思います.

有機物マルチ素材別,雑草抑制量.

早速,今回も本書から,資料を引用させていただいております.
ラジオのトップの方には,マルチ素材として活用したもの,上から針葉樹,広葉樹,シバ,雑草,食品抽出残渣.対象区ですね.
最後の対象区というのは,何もマルチをしていないところですね.
マルチをした結果,雑草の抑制効果がどのくらい良かったのか,ということを数値化するために,あえて何も処理をしないところを設けてます.
対象区の雑草量を100%として,他のマルチ素材をしたところがどのくらい抑制されたのかを検討します.

今回の調査では,マルチをして3ヶ月後の夏の雑草,12ヶ月後の冬の雑草,そして16ヶ月後の夏の雑草を調べてます.
今回の調査では,数字が低い方が,優秀なマルチ素材であると考えることができます.
マルチの暑さは全て3cmにしております.

抑草効果意外の要素は変わらなかった.

この調査は2年間を費やした調査なのですが,どの素材でも土壌の物理性や化学性はほとんど変わらなかったと言います.
つまり,土壌pHや窒素量,炭素量,光遮蔽度,温度,湿度,そういったものは,素材間の顕著な差は認められませんでした.

雑草の抑制効果だけ,顕著に見られたということですね.

夏の雑草の抑制効果で差が出る.

さて,結果と考察を見ていきます.
この研究で面白いことは,夏の雑草の抑制効果に顕著な差が出ることです.

ヒノキやスギのように強い雑草抑制効果を示すものから,ノシバやネズミムギのように雑草抑制効果がほとんどないものが確認できました.
また,冬の雑草抑制は,多くの素材で差がなく,ほとんど抑えられております.

やはり,冬の雑草は抑えるのが簡単であると言います.
雑草の生育も遅く,葉っぱも広がりがあるタイプで,マルチからの物理的な圧力を受けやすいので,抑草が簡単です.
一方で,夏の雑草は,イネ科雑草などのように,子葉が鋭いものが多く,マルチの上から押される物理的な圧力を受けにくいということもあります.
また,気温的なものもあり,生育が旺盛です.

雑草の生育を手助けするマルチ!

今回の調査の結果,一つ面白いこともあります.
ノシバや,茶殻などをマルチとして活用すると,なんと,雑草の生育がよく,100%を超えるのですね.

この理由は,刈り取り後のシバはや食品抽出残渣には,木質部がないので,土壌細菌や真菌によって簡単に分解されてしまうと.
そのため,分解されて雑草の養分になるということでした.

一方で,草本ではなく木本系の有機物は,セルロースやヘミセルロース,リグニンといった硬い繊維が多く,分解には,土壌動物やキノコなどの担子菌類が必要なので,分解が遅いのです.また,有機物から溶脱する抑制物質の働きが強くなります.

生物活性の影響

この調査で面白いのは,もう一つあって,生物活性の影響を調べています.
つまり,素材別に,レタスがどのくらい成長するのか,というものを確認しております.
雑草抑制効果に加え,レタスなどの作物も成長阻害が起きないのか?という確認ですね.

本調査では,ヒノキやアカマツ,スギ,アセビ,キョウチクトウなどの素材は,強いレタスの成長抑制作用が確認されました.
一方で,シバや雑草,食品抽出残渣区は,レタスの成長促進作用が見られました.
しかし,チガヤとススキも,針葉樹ほどではないですが.レタスの成長の抑制が見られているのですよね.
面白い結果です.僕は雑草マルチで,チガヤとススキを活用しているので,とても参考になりました.
チガヤやススキをマルチとして活用する際には,あまり植物体には接触させずに,畝間や,その他周囲に活用しようと思いました.

このレタスの成長抑制や促進などの図表の結果は,ぜひ現代農業の本書でご覧ください.
チャンネル概要欄からどうぞ.

一つ付けくわておきます.
食品抽出残渣区には,レタスの成長促進作用が見られましたが,コーヒーに関しては成長抑制が見られております.
僕も以前,かなり研究論文を調査して,コーヒーには雑草抑制効果はあるが,野菜の生育阻害にもなる可能性が高いということをラジオでお話ししてます.
詳しくは,こちらの記事をどうぞ!


けんゆー

現代農業の2021年5月号」おすすめですー!