堆肥とは!?堆肥化で起こっていること.土の話や菌の話など1
この記事のポイント
  • 堆肥とは有機物が微生物の働きによって分解されたもの.
  • 土壌改良や肥料成分が入っている!
  • 分解と発酵,腐敗の違いをご紹介!

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

本日は「堆肥って何!?堆肥を作るときに何が起こっているの?とか,その中で活躍する菌」などについてお話をしたいと思います.
僕らも,圃場がいくつかあり,圃場を分けて,自然栽培と有機栽培をしているのですが,有機栽培では堆肥を使用します.
僕自身の性格が,堆肥って何?畑に入れるとどのようなことがあるの?とか,この堆肥は何から作られてどのような過程を経て堆肥になっているのか?など,やはり自身が使用するものに関しては,こと細かく理解したいので,多くの書籍や雑誌,論文を読んである程度,調べました.
今回は,堆肥の基本的なことから,メカニズム的なところまでお話できたらなと思います.
家庭菜園をされている方,そして有機栽培されている方の参考になれば幸いです.

そもそも堆肥って何!?

堆肥を一言でいうと「有機物が微生物らの働きによって,分解されたもの」ですね.
これが,畑の土に入ることによって,痩せた土壌の物理性が改善されたり,ちょっとした肥料成分になったりするのですね.

有機物というのは,科学的にいうと炭素を含む化合物ですが,私たち人間も人間も有機物,私たちが食べる食べ物も大体は有機物,そしてそこから出る生ゴミ,さらには,家畜の糞尿,雑草,稲わら,生物とか生物の一部というものは有機物と言っても良いのかもしれないですね.髪の毛や,家畜の骨(骨粉)とか,爪なども有機物なんですよね.

この有機物自体を直接畑に入れても,土壌の物理性が改善されるわけでもなく,植物が肥料として吸収することはできないのですね.
土壌改良とか肥料等の目的のためには,堆肥にする必要があります.

これがいわゆる堆肥化(微生物による分解)というものです.
市販されているものでも,牛糞堆肥,鶏糞堆肥,豚糞堆肥,バーク堆肥とか色々ありますが,これは,有機物を堆肥化させたものなのですね.

この堆肥は肥料なのか!?

ではこの堆肥は肥料なのか?野菜が生育するための十分な肥料として活用できるのか?という疑問があると思いますが,結論から言うと,有機物によって,含まれる成分が異なります.例えば,よく言われるのが,油かすや魚粕,米ぬかなどの有機物は,肥料成分が多いと,そして,家畜由来の牛糞などはそれらと比較して,少ないとよく言われますが,材料によって,違うのですよね.

一般的に,油かすや米ぬかなどの肥効が強いものは,ボカシ・発酵肥料と呼ばれており,肥料成分をなるべく飛ばさないようにこまめに切り返しなどをして作ります.
ボカシ材は,肥効が強い材料をそのまま土に入れると,植物の根っこを傷つけたりするので,畑の土を混ぜて,一度発酵させ,その肥効を和らげる,ボカすというところから名前がついてます.

ただ,ボカシというものは,簡単に作れるので,農家さんによって作り方が違うのですよね.調べれば調べるほどその多様なやり方に驚きます.
微生物の力を利用するというのは,堆肥と一緒ですが,一般的に堆肥と呼ばれているものよりも短期間で完成します.
このラジオでも,米ぬかのところの話などで,色々とお話をしているので,是非そちらを再度お聞きいただければと思います.

堆肥の主な目的は土壌改良!?

家畜由来の堆肥も,肥料分はあるのにはあるのですが,やはり,有機物の分解の過程で,窒素成分などが揮発するので,完熟の堆肥の窒素などは1%とか2%とか,そのようなものになっているのですよね.メーカーによっても違うので一概には言えないですが,その中でも,鶏糞は窒素やリン酸含有量などが優れていると言われております.
(家畜堆肥の効果はまた今度取り上げます.)

なので,一般的に堆肥の主な目的というのは,土壌の物理性を向上することが狙いだったりするのですね.
よく畑の土をフカフカにするため,とか,団粒化を促進するため,など言われますが,やはり堆肥を入れると,畑の中の微生物が増えるのですよね.
そして,土着菌が増え,土を豊かにしてくれるのですね.
また,もともと土壌の中にあった有機物も,さらに分解が進み,チッソを始め多くの養分が放出されたりします.
プライミング効果と呼びます.

なので,堆肥とは別で,肥料分として,他の資材を入れているところが多いと思います.
(僕たちはそんな単位面積当たり,作付け量はそんなに多くないので,牛糞+米ぬか+枯れ草を入れております.)

堆肥化では何が起こっているのか!?

では,次に堆肥化のお話をしたいと思います.
有機物が微生物によって分解される過程では,どのようなことが起こっているのか?ということについてお話をしたいと思います.
よく,堆肥やボカシ肥を作る際には「発酵」という言葉がよく使われますが,正確には「分解」なのですね.しかし,一般的な認知では,発酵も分解も認知の大きなギャップはそんなにないので,どちらでも良いとも思います.今回は,ついでに少し言葉の定義から確認していきます.

発酵と腐敗の違い!?

ということで「発酵」と「腐敗」の違いについて少しだけ,お話をしたいと思います.
発酵も腐敗も,微生物の力によって,有機物の形が変わることを言いますが,人間にとって有益である場合は「発酵」,そして無益である場合は「腐敗」と呼ばれます.
厳密な定義を示すのがかなり難しいのが「発酵」と「腐敗」です.

発酵菌や腐敗菌が増えることでそれが分かれるということもありますが,この発酵菌や腐敗菌も言葉としてはあまり適切ではないのですね.
例えば,嫌気性発酵の乳酸菌が働きヨーグルトや味噌が作られますが,これが清酒(せいしゅ)中で増殖する場合は火落ちといって腐敗を意味するのですね.濁ってしまい,酸や独特な異臭がして美味しくなくなるのですね.
また,大豆に枯草菌(納豆菌の一部)を生やして納豆が作られる場合には発酵とよばれますが,煮豆を放っておいて枯草菌が増え、粘り気(ネト)アンモニア臭がしたときは腐敗と呼ばれますね.

発酵や腐敗には,多くの菌が関係しているのですが,やはり,人間によって有益である場合は「発酵」なのですね.

堆肥作りに欠かせない有機物による微生物分解も,姿形を変えたときに,人間にとって有益なので「発酵」と意識的に呼んでいるのかもしれないですね.

堆肥化について!

有機物が微生物により分解されて堆肥化していきますが,これは多くの微生物がバトンリレー的に役割をこなしていきます.

この分解には,3つの段階があります.先に,大枠をご説明いたします.

まず最初に有機物のタンパク質が先に分解されてきます.
その次,2番目に,繊維質(セルロースやヘミセルロースなど)が分解されます.
最後に,その他物質,リグニンと呼ばれる植物の木材繊維を接着させて強度を高める物質があるのですが,これが分解されます.もちろん,この最後のリグニンが最も分解が難しい難分解性の有機物になります.

分解のされやすさは,C/N比と呼ばれる炭素比と呼ばれるもので大体は決まる!というお話をしましたね.


一般的に,C/N比が高いものほど,分解がされにくいのですが,窒素に対して炭素分が多く,やはり繊維質っぽいのですよね.
例えば,米ぬか,最もC/N比のバランスがよく,20ですね.そして落ち葉,45,そして剪定枝が60,牛糞は15,油かすが5ほどでしたね.

さてさて,話を戻して,分解の話ですけれども,

初めの段階は,有機物に含まれる糖類タンパク質アミノ酸類が分解されるのでしたね.
バトンリレーと言いましたが,初めに活躍するのは,こうじ菌などの糸状菌です.真っ白な菌糸がフワッフワに生えてます.
発酵のスターターとして活躍する菌です.酸素を好み,分解が急速に進みます.
この時にこうじ菌による分解に伴う熱生成が起き,温度がグワッと上がりますが,こうじ菌は熱に強くはありません.

次に,バトンが渡るのが放線菌と呼ばれるカタイ有機物を分解するのが得意な菌ですね.
彼らは温度に非常に強い.この時堆肥の温度は60度付近まで上昇することもあります.
彼ら放線菌が,糸状菌が分解できなかった繊維質のセルロースやヘミセルロースの分解を行います.

また徐々にエサが少なくなるに従い,多くの細菌バクテリアも発生し,繊維を食べます.
温度も徐々に低下してきます.

最後に,リグニンが残りますが,これは,やや大型の微生物が分解してくれます.
例えばキノコ菌や,また堆肥の中にミミズなどの小さい生き物も見られることもありますね.

このように,こうじ菌から放線菌,細菌などのバトンリレーを通して,分解されて堆肥になっていくのですね.
もちろんこれだけではなく,他にも多くの菌も働いております.
酸素が苦手な,乳酸菌酵母なども部分的には活躍しております.

土ごと発酵について!

最後に,堆肥をどこで作るかというのも,農家さんの楽しみの一つなのかもしれないですね.
これまでは,土の外で作る堆肥のお話をしておりましたが,農家さんによっては,土の中で堆肥化を進める人もおります.

完熟堆肥を投入するのではなく,事前に未熟な状態,未熟な有機物を入れるのですね.
例えば,緑肥を引き込むとか,残渣に米ぬかをふって,浅く土と混ぜこむとか,色々とあります.
未熟な堆肥には,微生物のエサとなる有機物が豊富に入っているので,分解の過程で土着菌が増えて,いつの間にか,土壌の団粒化が進んでいるというわけですね.
しかしながら,土の中にいる菌は,1gに1億と言われているほど,いろんな菌がおります.ものすごく多様です.
酸素が好きなものと,嫌いなものもいるので,土ごと発酵,埋める深さによっても出来上がり方が変わります.
その中で,病原菌と呼ばれるものが増える場合もあるので,そこら辺は,考慮する必要があります.
やり方以外にも,土にもよりますし,作っている作物にもよるので,一概には言えないですが,土の中で堆肥化させる方法もあるよ!ということでした.

作物を作る!ということはね,多種多様三者三様を凌ぐ,百人百様なので,面白いですよね.