高い糖度のイチジクを作るカギ!?
この記事のまとめ.
  • 根域栽培をすることによって糖度が上がる!
  • 24Lの用土量で0.5%~1%程度の向上.
  • 葉面積指数などが適正になる.

けんゆー

ハイサーイ!


けんゆー

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こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

今回は「糖度の高いイチジクの作り方」をシェアしていきたいと思います.
これまで,イチジクの基本的な系統の話や,現在問題になっている「忌地」の話,さらには,耐寒性のある品種などを取り上げてきました.



本日は「糖度の高いイチジクの作り方」という内容なのですが,実は同じ管理方法なのだが,あることをすることによって,糖度が良くなると言うことが言われております.今回紹介する内容は,学術論文をもとに5年間調査した研究を紹介するのですが,とても簡単な方法で,すぐに実践できるので,ぜひ挑戦してみていただきたいです.家庭菜園をされてる方や,イチジクを栽培されている方,そしてこれから初めてみたいと考えている方のご参考になれば幸いです.

結論「根域制限」!!

さて,「糖度の高いイチジクの作り方」なのですが,結論から言うと根域制限です.
根域制限とは何かと言うと,ポットや鉢植えなどでイチジクを管理し,根っこの張れる用土の空間を制限してあげることです.とても簡単というか,逆に皆さんが栽培してる環境は既に,鉢植えで,根域制限がなされている環境なのかもしれないですね.今回は,ではどのくらいの根域が効果的だったのか?なぜ根域を制限すると糖度が上がったのか?などを深掘りしていきたいと思います.

紹介する論文.

紹介する論文は「イチジクの根域制限栽培における用土量が樹体生育,果実収量,品質および乾物生産に及ぼす影響」です.この文献は,2004年に書かれました.執筆元は「静岡県柑橘試験場 落葉果樹分場」さんの方から出ているものです.インターネットで無料で見られるので,ぜひ見てください.

実験条件

では,実験の条件をお話しいたします.
この実験では,桝井ドーフィンと言われる品種を使用してます.

けんゆー

日本中でとても有名な品種で,ホームセンターなどでもよく見るね!

気になる根域制限の用土の量ですが,この実験では3つの条件を試しました.
それぞれ,24L48L72Lの3種類です.
よく,ホームセンタで土を買う方は,10Lとか,14Lの土の用土が販売されてるので,イメージがしやすいと思います.

今回,それぞれの条件で定植して5年間調査してます.
糖度だけではなく,果実の色合い,枝の長さ,太さ,一木あたりの葉面積および葉面積指数(LAI),さらには,果実の重さ,収穫量,などなど,毎年調査して得られた超貴重な実験データです.

調査を正確にするために,根域制限の用土の量だけ変えて,その他条件は同じにしてます.
イチジクの木の樹形は,結果枝を2本だけ残して,Uの字になるように仕立てております.
そして,10aあたりの結果枝本数が2700本になるようにしてます.
使用した用土は,黒ボク未耕土に牛糞堆肥を30%混合したものです.

灌水は,深さ15cmのところに,テンシオメータと呼ばれる土壌水分測定器を設置し,それがpF2.0になった時に,自動かん水ができるようなもので行っております.肥料は,毎年一つの樹あたり,窒素量が10~20g相当の被覆混合肥料と化成肥料を使ってます.

枝の管理に関しては,葉っぱが6~7枚展開してきた時に,芽の整理を行って,摘心は,定植1年目に25節,2年目以降は17節が確保された時点で摘心を行っております.また,結果枝は,毎年2節を残して剪定してます.

糖度は!?

そのような実験条件のもと,多くの生育データが確保されてますが,今回のラジオでは,糖度が毎年どのようになったのかをお伝えしたいともいます.

今回の結果では,根域制限をすることによって同じ条件で糖度を調査すると,約0.5~1%程度,甘くなるという結果になりました.

今回,その原因として,24Lの根域制限をした方が,木がコンパクトに仕上がり,一つの木あたりの葉面積が小さくなったことが挙げられております.イチジク果実の着色や品質などは,果実に当たる光の量に大きく影響されることが一般的に知られております.
1996年の株本らの論文では,イチジクの桝井ドーフォンで,市場性の高い果実の色,そして品質の良いものを生成するためには,樹冠内相対日射量が約15%以上が必要であることが言われております.一文字仕立ての場合,相対日射量を15%とする受光態勢は,葉面積指数(LAI:Leaf Area Index)に換算すると2程度だと言われてます.こちら,繁茂度の指標になるのですが,大きすぎても良くないと言われております.光合成の観点から,少なすぎてもよくないが,多すぎても葉が込み合ったりと良くないので,果樹によっても適度なものがあるのです.3年目に糖度が低いのは,LAI値が大きく,光環境が悪かったことを報告してます.

他にも多くの考察がなされておりますが,気になる方は,本文献を読んでください.

つまり,根っこが制限されて,地上もコンパクトになり,受光態勢などもちょうど良くなり果実が甘くなったと考えられます.

いかがだったでしょうか.
特別な処理をする必要もなく,根域を考えるだけで,糖度が上がると言うのは嬉しいことだと思います.
前回も忌地のところでお話ししましたが,イチジク栽培は特に,土壌の影響を強く受ける果樹だと言われます.例えば,水田転作園では,樹勢が急激に低下しやすいなどと言われております.また,ネコブセンチュウなどの問題もあります.鉢植え栽培などは,このような土壌による影響を受けないので,特に初心者の方にもお勧めできるやり方です.
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