イチジク(Ficus carica)について
この記事のポイント
  • イチジク(無花果)はクワ科イチジク属に属する.
  • 最適な環境で栽培すると実は大木になるし,長寿命.
  • 4つの基本的な型が存在する.

けんゆー

ハイサーイ!


けんゆー

記事リンク付きの感想ツイートなどは掲載される可能性あり!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
今日はイチジクについて取り上げたいと思います.
僕らも昨年より露地栽培で数本,そして今年に入って鉢植えでいくつかの品種を導入してイチジクを栽培しております.
この記事では,イチジクの生理学的特徴や,生育特性などについてとことんシェアしていきたいと思います.これからイチジクを栽培してみたいと考えてる方は,既に栽培してる方のご参考になれば幸いです.

イチジクとは!?

イチジクとは!?
  • イチジク:クワ科(Moraceae),イチジク属(Ficus LINN.).
  • 学名「Ficus carica L.」
  • 亜熱帯果樹(原産:アラビア南部地帯や東南アジアなど).
  • 半耐寒性の高木落葉樹.

イチジクは,クワ科イチジク属,学名を「Ficus carica L.」と言います.
熱帯性のイチジク属(Ficus属)というと,

  • ウドンゲと呼ばれるフサナリイチジク「Ficus glomerata」,
  • ミミイチジク「Ficus hispida」,
  • オオイタビ「Ficus pumila」,
  • オオバイチジク「Ficus roxburghii」,
  • エジプトイチジク(イチジクグワ)「Ficus sycomorus」,
  • クビナガイチジク「Ficus variegata」,
  • チビイチジク「Ficus nota」,

などが知られておりますね.この辺は「図説 熱帯の果樹」を参考にしていただけたらと思います.
もしくは,そろそろ僕らのyoutubeで「果樹ラジオ」として取り上げていけたらと思います.

イチジクの原産は,アラビア南部地帯や東南アジアなどと言われております.
実はイチジク属(Ficus属)は,とても歴史のある果実で,メソポタミアでは6千年以上前から栽培されてると言われてますし,エジプトやギリシャなどでは紀元前から栽培がなされていたと言われます.

イチジクの漢字は「無花果」!?

イチジクは漢字で書くと「無花果」となります.
中国で名付けられた字をそのまま日本語でも使っております.
花を咲かせずに実をつけるように見えることに由来することから,この字がつけられました.
ただ,厳密に言うと,他の植物のように大きい花は咲かないのですが,果実の中に無数の小さい花があると言うタイプです.学術的には,このような花のつき方を「隠頭花序(いんとうかじょ)」と言います.花軸が変形し,花嚢(かのう)と呼ばれるものになります.
つまり,小花(しょうか)を包む袋状の果実が,花嚢(かのう)に当たるわけです.

また,イチジクは,雌雄異花ですが,イチジク属には雌雄同株で同一の花嚢に両方花をつける種と雌雄異株で雄株には同一の花嚢に雌雄両方の花、雌株には雌花のみを形成する種がありますが,ここはまたおいおい詳しく取り上げていきたいと思います.

木の特性

イチジクは亜熱帯性果樹で,実は栽培環境が良ければ,とても大きな木になります.
適地であれば,樹高は20mにもなり,100年以上も樹齢がある木が存在しますが,日本では,そういった木々はほとんど見かけません.

日本でのイチジクは,樹高は基本的に低く,盃状仕立て一文字仕立てと言われる方法で栽培されることが普通で,大木になっているのはあまり見かけません.これは,気候とか土壌,あるいは栽培管理の面からこういった樹形が推奨されているのだと推察されます.
先ほど,イチジクの樹齢の話をしましたが,日本での栽培だとイチジクの寿命は10~15年と短い場合が多いです.これは,忌地(いや地)が大きく関係しているのですが,これが小木の原因でもあると言われます.またひどい場合は,収量低下を招いたりすると言われてます.

けんゆー

忌地の話は,また今後深く取り上げたいと思います.

イチジクの4つの基本型

イチジクは,結実に関する習性によって,4つのタイプに分けられます.
それぞれ,

  • カプリ種「Ficus carica LINN. var. sylvestris SHINN 」.
  • スミルナ種「Ficus carica LINN. var. Smyrnica SHINN」.
  • 普通種「Ficus carica LINN. var. hortensis SHINN」.
  • サンペドロ種「Ficus carica LINN. var. intermedia SHINN」.

それぞれ深掘りしていきます.

カプリ種「Ficus carica LINN. var. sylvestris SHINN 」

こちらは,小アジア及びアラビア地方の野生種になります.

この種はイチジクの栽培品種の祖先と言われてます.カプリ種の代表的な品種としてはパルマタ,スタンフォード,サムソンなどがありますが,カプリ種は国内栽培では滅多に見られません.

祖先と呼ばれてるだけあって,果実の内には雄花と雌花を持ちます.
受粉中として,小蝿の幼虫(ブラストファーガ:Blastophaga grossorum)がよく花の中に生息していることがあり,人間の食用には適さないです.なので,主に受粉樹として活用されることが多いです.

スミルナ種「Ficus carica LINN. var. Smyrnica SHINN」.

こちらは,スミルナと言う地域で古くから栽培されていたものです.

トルコ西端,エーゲ海に面する古代都市ですね.
のちに「イズミル」となりましたが,古代から現代を通じて小アジアとエーゲ海地方のなかで最も繁栄してきた港湾(こうわん)の商工業都市です.

けんゆー

船が出入りしたり,停泊したりと,モノの行き来がある都市だね!

こちらのスミルナ種は,乾燥用果実として広く栽培がなされてる品種が多いです.
乾果にすると,特有の香りがあり,品質は最も優れているとされます.
代表的な品種としては,カルミルナ,バーダジック,カッサバなどの品種があります.
日本での栽培はほぼないとされてます.

こちらの種の結実には,先ほど紹介したカプリ種の受粉が必要だと言われております.
ただ,近年は,植物ホルモンを活用することによって単為結果も可能であるとされてます.

普通種「Ficus carica LINN. var. hortensis SHINN」.

普通種が,国内外でも最も普通なもので,よく見られます.
このタイプのイチジクは,品種も多く,とても人気のあるものが存在します.

日本でも有名なものは,桝井ドーフィン(カリフォルニアから導入),日本種と言われる蓬莱柿(日本の在来種と言われてる),僕も栽培してて枯らしてしまったブラウンターキー(耐寒性が高いと言われる),ミッション,ホワイトイスキア,ホワイトゼノア,カドタなど,多くの品種が存在します.

日本国内で栽培されてる夏秋兼用種や秋果専用と呼ばれるものは,全てこの普通種に分類されます.
こちらは,受粉をしなくても実が膨らみ,単為結果をします.
一般には雄花を持ちません.

サンペドロ種「Ficus carica LINN. var. intermedia SHINN」.

最後は,サンペドロ種になります.
こちらは,僕のyoutubeの植え替えでちょろっと紹介をしたことがあるのですが,国内で栽培される夏果専用種の品種がこれに属します.動画ではThe kingの植え替えを紹介したのですが,他にも,サンペドロ ホワイトや,フランス原産のビオレードーフィンなどが有名です.

結実の習性は,先ほど紹介した普通種とスミルナ種の中間に当たります.
こちらも雄花を持たず,第一期果は,普通種と同様に単為結果をしますが,ただ,第二期につく果実はスミルナ種と同様に,カプリ種の受粉が必要になります.そのため,普通種とスミルナ種の中間に当たると言われております.