【#135】イチジクの凍害を防ぐ方法.
この記事のポイント
  • 凍害では,「主枝背面部の組織崩壊」や「芽や地上部の枯死」が発生する.
  • 灌水頻度を下げる,遮光する,温室に移動するなどではなく他の方法!
  • 結論から言うと「環状剥皮」!

けんゆー

ハイサーイ!


けんゆー

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こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

今回は「イチジクの凍害を防ぐための方法」をシェアしたいと思います.
イチジクを栽培されてる方で,冬の低温でやられてしまった方や,凍害で枯らしてしまったという方も多いと思いますが,今回はそんな方に目から鱗の情報を共有したいと思います.
一般的な越冬の方法は不織布を使うとか,灌水頻度を下げるとか,遮光などをするとか,温室に移動するなどがありますが,今回は,そんな一般的な方法ではなく,ちょっとしたテクニカルな部分をシャアしたいと思います.

イチジクを栽培されてる方,これからやってみたいと思う方,本土での栽培で冬の栽培環境がちょっとギリギリな方などの参考になれば幸いです.

けんゆー

コメントもありがとう!

環状剥皮が良いらしい!

結論からお話しすると「環状剥皮」です.
環状剥皮というのは,もともと花芽誘導や果実品質向上などを目的に行われることが多いです.
枝や主幹の樹皮部分を幅数mm~1cm程度環状に剥ぎ取る栽培技術のことを言います.
僕らも多くの熱帯果樹には,毎年花を誘導する技術としてこの環状剥皮を実施してます.

けんゆー

僕たちの圃場のアボカドでは,多くの実生樹が環状剥皮によって花が咲いたよ!

この「環状剥皮」を行うことで,凍害が軽減されるという研究報告があるのですが,今回はこちらを詳細に解説していきたいと思います.

参考にした文献は2011年の「環状剥皮がイチジクの凍害に及ぼす影響」というものです.
兵庫県立農林水産技術センターの真野さんという方が筆頭著者ですね.
ぜひ,本文献は,インターネットで無料で読めるので,ぜひご覧ください.
今回は,重要なところを抽出してお話しします.

本研究で確かめた品種.

本研究で確かめた品種は「桝井ドーフィン」です.

けんゆー

桝井ドーフィンの植え替えをした動画もあるので合わせてどうぞ!


桝井ドーフィンという品種は,イチジク日本種と呼ばれる「蓬莱柿」などに比べて耐寒性がそこまで強くないため,従来は,冬季温暖な気候の場所で栽培がなされることが多いです.つまり,冬でも気温が大きく下がりにくい沿岸部を中心に産地が形成されてましたが,近年は,イチジクが比較的人気な果樹となっており,従来不適地とされた内陸部での栽培が試みられているようです.ただ,やはり冬の凍害などの事例が増加してるようですね.

イチジクの凍害はどのような症状が起こるのか?

では,イチジクの凍害ではどのようなことが起こるのでしょうか.
本文献によると,主に「主枝背面部の組織崩壊」もしくは「芽や地上部の枯死」などの症状がおきます.症状は,本文献をご参照ください.

挿木用の穂木にも環状剥皮

本実験では,野外での凍害発生を調査してます.
地際から約30cmの主幹部に幅約5mmの環状剥皮をしてます.
8本の木を環状剥皮して,対照として他の8本は環状剥皮をしないで比較しました.

本実験での環状剥皮は,挿木用の穂木にもあらかじめ処理をしていて,穂木の萌芽能力も調べております.試験した年はバラバラですが,環状剥皮した枝は大体66本,対照に環状剥皮をしてないものも66本調べれております.環状剥皮は,基部(元から2~3節目)に幅1cm程度の環状剥皮をおこなっております.
細かい実施条件などは,ぜひ文献を確認されてください.

結果は!?

環状剥皮を行なった場合の結果をシェアします.

まず,挿木個体ですが,環状剥皮をすることによって,かなり凍害の影響を軽減できるという結果になりました.本研究では,萌芽時期に,0.6℃の低温に遭遇し,無処理区の個体は 8 割以上が枯死したが,環状剥皮区の枯死率は無処理区より少なく,5 割程度であったことを報告してます.

また,さらに,低温処理(0℃~-7℃)まで調べた結果,環状剥皮処理,無処理区をとも−3°C 以下では凍害による枯死が確認されたが,環状剥皮区中位節の枯死率は無処理区の上中位節の枯死率より有意に低かったことを報告してます.また,環状剥皮区のデンプン含量は,各節位において,無処理に比べて優位に高かったことを報告してます.環状剥皮をすると,萌芽が遅くはなるという結果になりましたが,ただし,枝の糖とデンプン含量が高く,厳寒期の凍害を軽減できるという結果になりました.
また,休眠枝の貯蔵養分を高めるという意味もあり,非常に有効な手段であると考えられております.

話は変わりますが,確かに,グァバなどの熱帯果樹も接木が難しいと言われてたりしますが,穂木を採取する前に環状剥皮をしていたら成功率が上がるとも言われてますし,環状剥皮には,花芽誘導だけではなく,色々な効果があるのですね.

いかがだったでしょうか.
今回は,「環状剥皮がイチジクの凍害に及ぼす影響」という文献を紹介させていただきました.
また,果樹の耐寒性については,秋の低温が重要なことや,ハードニングというものが必要であることなどを紹介しています.
さらに,アボカドの事例ですが,越冬には遮光などが有効ではないか?というラジオも紹介しておりますので,ぜひお聞きください.