トマトの新技術と理論②:遺伝と育種.なぜ美味しくなったのか?元々は美味しくなったか!
この記事のポイント
  • トマトの遺伝と育種の話!
  • トマトは強烈なボトルネック効果を受けており,遺伝的多様性が低い.
  • トマトの13種の野生種の話!品種改良の役に立つ!

けんゆー

ハイサーイ!


けんゆー

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こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

トマトの話,前回の続きです.


以下の書籍「トマト-100トンどりの新技術と理論-」という本が楽しくて,勝手にコラム連載的に取り上げてます.
本日は第2章の「遺伝と育種」を取り上げます.
ラジオ感覚で聴きたい方は,youtubeの方をご覧ください.
作業をしながらでも聞けますので,おすすめです.

けんゆー

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1.トマトの遺伝と育種

けんゆー

トマトが食用になるには長年の月日がかかった.

トマトの原産は,アンデス山脈なのですが,そこから人間社会の食文化に根付くまでは,何世紀もの年月がかかったと言われております.

元々,トマトは現在のように大きく,甘いものではなく,小さく,どちらかというと味もそんなに魅力的なものではなかったようです.
それから,長年の栽培や環境への順化を経て,現在の大きく,甘く,美味しいトマトができるわけですが,実はこの栽培および品種改良はとてつもなく,難しかったと言われております.

なぜかというと,トマトは自分の花粉で種をつける植物で,遺伝的多様性が低かったのですね.
こういった特性は自殖性と呼ばれますが,つまり,一個体だけで繁殖ができるのです.

そういったことより,遺伝的多様性は減少していく傾向にあり,美味しいものを作るというものが難しいのですね.

2. 人間による種のボトルネック効果

トマトは,過去600年の間に,新大陸からヨーロッパに持ち込まれ,その後再び,北米へと渡り,そこで手に入る素材と組み合わされて,品種改良が行われた歴史があります.

このような人類による移動を経験したため,強度のボトルネック効果を受けております.

ボトルネック効果というのは,集団の個体数が一時的に激減することによって,遺伝的多様性が低下することをさします.

このような人間による移動を経験したために,トマトの栽培種の発展は遅れ,遺伝的変異も限定的にならざるを得なかったということになります.

20世紀になると,その後の人類の努力,科学の進展,遺伝子の解明などにより,品種改良が進み,急激に発達した,そんな作物になります.

3.トマトの野生種には,13の種がある.

現在は,トマトの属する「Solanum属Lycopersicon節」には,13の種が見つかっております.

  • Solanum lycopersicum.
  • S. pimpinellifolium.
  • S. cheesmaniae.
  • S. galapagense.
  • S. chmielewskii.
  • S. habrochaites.
  • S. neorickii.
  • S. pennellii.
  • S. arcanum.
  • S. chilense.
  • S. corneliomulleri.
  • S. huaylasense.
  • S. peruvianum.

その内,食用トマトと交雑が容易なのは,8種です.
その内4種は,食用トマトとほとんど同様な遺伝的特性を持つグループです.

また,食用トマトの遺伝的特性と大きく異なり,かつ,後輩も難しいものが5種存在します.
ただし,胚培養など,特殊な過程を経ていれば,交雑が可能です.

こう言った種を多く見つけた偉い博士は以下の方です.
2002年にお亡くなりになっておりますが,現在の美味しいトマトがあるのは,この方のおかげです.ありがとうございます.

トマトと,その近縁種の葉っぱは以下のような感じです.

交雑種の作り方も合わせてどうぞ.

4.3倍体も作れるが不味い.

3倍体などの基礎知識はこちらの記事からどうぞ!
【No.17】知らないから怖いこともあるし,知ってみて怖いこともある

種無しスイカを作るときは,一度コルヒチン処理というもので,4倍体のものを作って,その後,通常の2倍体のスイカと交配させます.
これによって,種無しの3倍体スイカが可能です.


実は,トマトも作ろうと思えば,3倍体トマトができます.
種無しです.

しかし,トマトの場合,現在食べられているものは,種がそこまで邪魔ではないですし,そういった処理をした途端,一気に味が美味しくなくなる,そういった植物なのです.

上の図では,4倍体トマトの特徴を書いてますが,この特徴が3倍体にも引き継がれます.
そのため,トマトは2倍体のまま食べられ続けております.

最後まで読んでいただきありがとうございます.
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