【#95】有機野菜は無農薬というわけではない!【野菜は小さい方を選びなさい02】
この記事のポイント
  • 有機栽培は37種類の農薬が使用可能(天然由来のものももちろんある).
  • ボルドー液やBT剤なども使用することができる!
  • 堆肥にも化学成分が検出されることもある.

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

前回は「肥料を入れずに育てる野菜の凄さ」ということでお話しさせていただきました.

今回は「有機栽培で作る野菜だから絶対に安心・安全」という思考はどうかな?というお話をさせていただきます.
参考にさせていただいた書籍は,今回も岡本よりたかさんの「野菜は小さい方を選びなさい」という書籍です.
第二章の中で,感動した所を取り上げてお話しさせていただきたいと思います.

今回のお話は,栽培者さん向けというよりも,どちらかというと野菜を選ぶ側,消費者さん向けのお話しだと思います.
有機栽培という野菜を好んで選択されている方も多いと思いますが,実は知っておいた方が良い事実もありますので,その辺を今回は共有しておきます.

今回取り上げるテーマ!

今回取り上げるテーマは,

  • 有機野菜は無農薬というわけではない!
  • 堆肥にも化学物質が含まれる場合がある!(おまけ)

それぞれ,深掘りしていきたいと思います.

有機野菜は無農薬というわけではない!

有機(有機栽培農作物)という言葉は,法律に縛られております.
JAS法という農林物資の規格化等に関する法律に基づく,有機食品の認証制度というものがあって,この基準を満たすものが「有機」と表示して販売できるようになります.

けんゆー

ここら辺の詳しい話は割愛します.詳しくは本書を読んでください!

言葉というのは非常にややこしいもので,僕たちは有機という表記を見ると,どうしても無農薬で栽培されているものと思ってしまいます.
しかし,厳密には,有機というものは無農薬ということではありません.

安全とか安心という前に,その辺の前提知識から整理していきたいと思います.
というのも,実は,現在,有機栽培でも使用が認められている農薬が結構あります.
本書によると,農薬の分類で37種類,製品にして47種類以上もあると言います.
これらの中には,天然由来のものもありますが,化学農薬とほとんど変わらないものもあります.

安全性の観点から考えると,もちろん慣行栽培も有機栽培も,科学肥料や農薬など,適量を守ると問題がないということでは変わりません.
しかし,有機栽培だと無農薬で安全だよね!と思っている方には,こういった事実もあるよ!ということを共有しておきます.

有機栽培でも使用できる農薬のうち,本書で紹介されているものが二つあります.

  1. ボルドー液.
  2. BT剤

ボルドー液というのは,殺菌剤として使われますが,硫酸銅消石灰の混合溶液のことです.
銅は作物上の水分中で銅イオン化します.銅イオンが病原菌に取りこまれ病原菌の生理活性を抑制することにより殺菌作用を発揮します.
硫酸銅と消石灰の混ぜる割合によって,〇〇式と呼び方が変わりますが,この濃度によっては,違反になることがあります.

BT剤というのは,細菌のバチルス・チューリンゲンシスというものを使用した生物農薬の一種になります.
聞いたことがある方も多いと思います.
これは,チョウ目,ハエ目,コウチュウ目の幼虫に効き目があります.
BT剤の,結晶性タンパク質が,昆虫腸内のアルカリ性消化液で分解されると毒素に変わり,こういったチョウなどのような昆虫の幼虫を殺虫します.
人間の胃液は酸性なので無害であるということで,問題がないとされていますが,本書によると,人間の健康を害するというデータも出ているようです.

現在は遺伝子組み換え作物(GMO:genetically modified organism)の開発が進んでおり,スイートコーンに,このバチルス・チューリンゲンシスの遺伝子を組み込んだコーンも誕生しております.アワノメイガという害虫に耐性を持たせたGMOですね.
今回は,遺伝子組み換えの話は割愛しますが,有機栽培というのは,こういったBT剤の活用もできるというわけですね.

現在の有機というものがどういう枠組みの中で,規定されているのか,ちょっとでも知るきっかけになれば良いと思いますし,このことによって,ご自身でまた深く調べてみても良いかと思います.

堆肥にも化学物質が含まれる場合がある!

第二章は少し思想強めな部分があるので,読んでいて若干,心が痛くなる部分がありますが,こういったこともあるのでしょうね,ということでご紹介させていただきます.
有機で野菜や果樹を作られている方は,堆肥を使用される場合が多いのですが,近年では,ここにも化学物質が入ってきている可能性があると本書では示唆しております.
僕は全てではないとは思いますが,本書でもいくつか調査をされたようです.

堆肥は,動物性と植物性の二つに分かれるのですが,完全に発酵(分解)したものであれば,害はありません.
ただ,調査の結果,未熟な有機物が残っている場合や,その有機物の中に科学物質が入っている場合があり,それが毒性を示すことがあると言います.

本書では色んな堆肥が例であげられていましたが,ここでは,牛糞を例にあげます.
牛は本来,草しか食べない動物なのですが,現在は,脂身を増やすために,餌としてトウモロコシや大豆が与えられる場合が多くなりました.
穀物飼料ですね.
牛は,元々草を食べるようにできているので,4つの胃では消化できず,消化できない穀物が胃のなかに残り,胃炎のような症状が出てくる個体が現れます.
(本書では,胃炎だけではなく様々な病気が襲うというふうに書かれておりましたが,正確な情報が分からなかったので飛ばします.)

牛が病気になれば薬が打たれ,中には抗生物質も打たれます.
やがて,牛の胃や腸の中で大腸菌が抗生物質に対して強い抵抗力を持つことによってO-157のような強い大腸菌が生まれます.その結果,より強力な抗生物質が必要になるということです.
もちろん,牛は排泄物として,そういった大腸菌などを外に出します.
体内に残った薬の成分や抗生物質,あるいはワクチンなどに含まれる重金属等が残留する可能性があります.
これらも堆肥を作る際に発酵により無毒化されれば良いのですが,肥料を作るのに何年もかかっていれば,肥料会社もコスト割れするために,できるだけ早く販売してしまうこともあるようです.
本書では,実施にホームセンタで販売されている堆肥を調べ,未完熟な堆肥であるものを見つけているようです.

この堆肥の話は,僕は若干懐疑的な心で読んでおりました.
しかし,「畜産業も農業も効率化しなければ生活が成り立たない業種になってしまったことが,こういった薬品の使用を加速させているのだな」ということを思いました.
考えさせられますね.

第二章のまとめですが,有機栽培とか慣行栽培とか,自然栽培とか,そういった農法よりも,野菜や果樹がどのようにして作られているのか,知ることが大事と書かれておりました.元も子もないといえばそれまでなのですが,今はSNSやyoutubeが発達しておりますから,アプローチできるところはアプローチをしても良いのかなと感じました!

ということで,次回は第三章以降を取り上げます!