窒素飢餓とは!?有機物を土壌に入れるとき,なぜ堆肥化しないとダメなのか?
この記事のポイント
  • 有機物を畑に入れる時は堆肥化する必要がある.
  • 堆肥化しないと,窒素飢餓が発生することがある.
  • 炭素化合物が多い有機物だと危なくて,逆に野菜の生育不良が起こる場合がある.

けんゆー

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けんゆー

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こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

今回は「有機物を土壌に入れるとき,なぜ堆肥化をしないとダメなのか?」というお話をさせていただきます.
家庭菜園や,有機栽培などをされている方は,何かしらの堆肥を使っている方も多いと思います.
また,家庭から出る生ごみや,畑から出てくる雑草,もしくは野菜の残渣などをもう一度畑の土作りをするために畑へ返してるいる方も多いと思います.実は,そのまま畑に入れてしまっていると,もしかしたら逆に野菜の生育阻害してしまう可能性もあります.そのため,多くは堆肥化をするのですが,今回は,なぜ堆肥化をしないといけないのか?についてシェアします.

そもそも堆肥とは?

そもそも,堆肥とは何か?について簡単に触れます.
堆肥というのは,土作りのための土壌改良を目的に使われることが多い資材です.
家畜ふん尿や稲わら,落ち葉,食品残渣などの有機物を,微生物の力を使って発酵・分解させ,成分的に安定化するまで腐熟させたものを言います.

第147回のラジオで,有機栄養の話をしましたが,元々は,厩肥(きゅうひ)と呼ばれるものから出発してるのですね.

厩肥というのは,家畜小屋でわらなどを敷き料として敷き,そこに排泄された糞尿を家畜に踏み込ませ,堆積して分解させたものが厩肥でした.ただ,現在は堆肥や厩肥などの区別を特にしなくなっており,主成分を明記した上で,全て堆肥と呼んでいることは多いです.例えば,牛糞おがくず堆肥など,そういった感じで呼ばれております.

今回の話は,牛糞やおがくずなどの生ものを,一旦分解させて堆肥にしようね!ということですが,なぜそうしなければいけないのかを共有します.

なぜ堆肥化しないといけないのか?

なぜ堆肥化しないといけないのか?ということを5つシェアしたいと思います.

  • 窒素飢餓を回避するため.
  • 下等なカビなどの発生を防ぐため.
  • 微生物の生成する有害物質を減らすため.
  • 雑草の種などの有害生物を死滅させるため.
  • 衛生上問題になる病害虫の伝染を防ぐため.

それぞれ,深掘りしていきますが,今回も「基礎講座 有機農業の技術」という書籍を参考に話をしていきます.

窒素飢餓を回避するため.

前回,牛糞堆肥,土に入れて100日後,きちんと植物に吸収されるの!?という話をさせていただきました.


その時に,有機物の中には,それを土壌に入れてしまうと,窒素飢餓といって,土の中の窒素が抜けてしまうというマイナスな影響もあります.という説明をしました.

(「基礎講座 有機農業の技術」より画像引用)

堆肥化というのは,有機物を微生物によって分解したものでしたが,実は有機物の中には,微生物の餌として食べやすいものとそうでないものが存在します.微生物にとって食べやすい炭素化合物がたくさんあると,微生物が爆発的に増えることがあり,その際に,有機物の中の窒素分だけでは間に合わなくなり,土壌の窒素分を使ってしまい,窒素飢餓というのが起こることがあります.

有機物にはC/N比という概念があります.
これは,有機物中に含まれる全炭素カーボンと全窒素ニトロジンの比ですね.
大体,このC/N比が20以下の状態であれば,窒素飢餓が起こらず,無機態窒素が素直に出てくるものだと言われております.

ちょっとここではより具体的に深掘りします.
微生物は,増殖するために炭素からエネルギーを得てます.
そして,一部の炭素を細胞骨格の合成に利用します.
人間もお米などの有機物を食べて,炭素化合物から呼吸によってエネルギを生み出しているのと一緒です.

植物にとって,窒素ももちろん必要です.
タンパク質や核酸などの合成に必要なわけです.
アミノ酸などの窒素の多い有機物があれば,余分になった窒素を無機態のアンモニウムとして放出するわけです.
これが,一般的な窒素の無機化です.窒素が足りている場合は,土壌から窒素を持って来なくても,微生物と有機物によって,無機態窒素が作られるわけです.

ただし,窒素を含んでない炭素の多い化合物の分解の場合には,微生物にとって窒素が足りないので,いったん,土壌の無機態窒素を横取りして自分の体を作るのです.窒素の有機化と言われることもありますが,土壌から無機態窒素がなくなり,窒素飢餓が起こります.C/N比が高い有機物を直接畑などに入れると,窒素飢餓が起こるのはこういうことでした.

なので,そのような不安定な有機物などは,畑に入れる前に,一度堆肥化させて,相対的にもある程度窒素濃度も考えたものを入れる必要があるわけです.

ということで,今回はここまで,次回以降,下等なカビなどの発生を防ぐためについてやっていきたいと思います.