有機農業の発展.有機栄養説と無機栄養説について.
この記事のポイント
  • 有機農業の発展は,二人の偉大な方によって進んだ.
  • 有機栄養説と無機栄養説というものが提唱された.
  • リービッヒの最小律なども解説.

けんゆー

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けんゆー

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こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

今回は「農学の発展」をテーマにお話ししたいと思います.
前回,有機農業と土ということでお話しさせていただきました.


色々と話してますが,とにかく物質循環というものを支えるのが土である,という内容でした.
土には,物理性や化学性だけではなく,生物性などもあるよというお話もさせていただきました.

有機農業を考えていく上では,やっぱり現在の問題や改善点だけではなく,これまでの変遷や歴史などのもっと大きな枠組みの理解が必要であると思われます.今回は,循環型の農業を考え,さらに近代農学を押し進めた二人の偉人を紹介します.聞いたことある方も多いと思いますが,ぜひ復習がてらブログを読んでいただけると幸いです.

循環型農業を作った人.

今回また,問題形式で出したいと思います.
やっぱりこのブログを通して,考えるきっかけをちょっとずつ与えていきたいので,ぜひヘキサゴンに出演したつもりで聞いてください.

1752年生まれ,現在の有機農業(循環型農業)の概念を作ったドイツの農学者で,近代農学の父とも呼ばれる人,腐食説(または有機栄養説)を唱え,厩肥,つまり家畜の排泄物を有効利用しようと考えた人は誰でしょう!

答えは,「Albrecht Daniel Thaer アルブレヒト・ダニエル・テーア」ですね.
科学界のアイザック・ニュートンくらい人気な人ですね.有機農業をしてる人だと,今かなりの人たちが盛り上がっているのだと思います.

テーアは,18世紀末から活躍した農学者ですね.
ちなみに,テーアは,元々医者だったのですが,妻へのプレゼントとして4haほどの農地を上げたみたいですね.そこで自信も植物や果樹などを育てていくうちに,農学へと目覚め,医者をやめ農学者になるという面白い人です.

著書には「合理的農業の基礎」という本もあります.
循環型農業を主張した方ですね.
具体的に何をしたのかというと,厩肥の効用や輪作などの重要性を伝えた人ですね.
輪作は当時,輪栽式農法などと呼ばれてました.

厩肥というのは,家畜の糞尿や敷き料を堆積腐熟させたものですね.
現在は,堆肥も厩肥もとても似通っていますが,堆肥とはもともと,植物などの有機物を主原料として醗酵促進剤等を混ぜて水分調整をしながら堆積して腐熟が進んだ物を堆肥と言ってました.厩肥は,厩舎(きゅうしゃ)等に敷かれたおが屑や,藁等が家畜の糞尿に混じった物を使ったものです.
家畜を飼いながら,穀類にクローバやカラスノエンドウなどのマメ科作物,そしてジャガイモやカブなどの根菜類などの飼料作物を組み合わせた輪作を行いました.
厩舎で牛などの家畜を飼いながら,厩肥をコントロールする.この厩肥を中心とする有機物を土に返していくことが大事だといいます.

テーアは,この厩肥の有効利用を唱えたのですが,当時はこの厩肥の本質は「フムス」と呼ばれる腐植にあると唱えました.これが腐植説とか,有機栄養説と呼ばれるものです.
この有機栄養説はつまり,フムスと呼ばれる有機物が植物の栄養になると考えるのです.当時,土の中の微生物の作用がよくわからなかった時代です.このフムスの中に,植物が成長するための栄養分である窒素やリン,その他さまざまなミネラルなども含まれているということを考えていました.

ただ,もちろん,この有機栄養説は否定されます.

無機栄養説

テーアが亡くなってから12年後,テーアの有機栄養説を否定する説が出てきました.
これが,「無機栄養説」というものです.

ここでまたクイズなのですが,「無機栄養説」を提唱した方は誰でしょうか.
この方も,ドイツの科学者です.1803年に生まれました.19世紀最大の化学者だと言われてます.

答えは「Justus Freiherr von Liebig ユストゥス フォン リービッヒ男爵」ですね.
どうでしょうか.
この業界では,アインシュタインくらい人気の世界的偉人なので,このラジオを聴いている方は,おそらく全員正解したと思います.とても有機農業に詳しい人も多いので,簡単すぎて石が飛んできそうなので,次回はもっと難しい問題を作っておきます.

この時代,リービッヒの他に,スプリンゲルという方も活躍しましたが,リービッヒが一番有名です.彼らは,「無機栄養説」を唱えたのですが,つまり有機物を土に戻すことの有効性を,フムスのような有機栄養ではなく,それらが分解されて無機態になって吸収されることを示しました.つまり,生物圏における元素の循環が大事であると解釈しました.植物が吸収する元素を調べ,それが現在の窒素・リン酸・カリウムという三大栄養素,さらに,他の植物必須元素も理解され,今日の農学の基礎を作っております.

リービッヒが提唱したもので有名なのは「リービッヒの最少律」というものですね.
やみくもに肥料を入れてもダメであり,植物の養分は適当な割合で供給される必要があることですが,つまり,もしある養分が,植物の要求に対して,相対的に不足すれば,他の養分が十分に供給されていたとしても,植物の生育収量は,その不足している養分の供給に支配されるというものです.
これは,よく「ドベネックの桶」として例えられるものですね.
植物の成長を桶の中に張られる水に見立て,桶を作っている板を養分・要因と見立てます.板の長さをそれぞれの養分の量に見立てているわけです,
たとえ一枚の板のみがどれだけ長くとも,一番短い部分から水は溢れ出し,結局水嵩は一番短い板の高さまでとなるので,全体のバランスが大事なのですね.
ただ,現在では,それぞれの要素・要因が互いに補い合う場合があり,最小律は必ずしも定まるものではない,とされてはいますが,大体は,これで説明がなされます.

リービッヒのことはまた次回でも詳しく取り上げます.
彼も無機栄養説を唱えてますが,循環型の農業を支持した方です.

そして,リービッヒの発見から多くの時間が経った今では,リービッヒの無機栄養説に加えて,では本当に植物は無機化されたものしか吸収しないのか?という疑問もありますよね.本当に有機物は吸収しないのか?ということもあると思います.この辺はまた今度お話ししたいと思います.