耕さない不耕起栽培は何が良いのか?農業は自然を壊すと言われるのはどういうことなのか?
この記事のポイント
  • 不耕起栽培で土壌が豊かになっていく理由を解説!
  • 耕すと土壌有機物が失われたり,土壌流出などの問題もある.
  • 全て不耕起栽培がいいわけではないが,耕すことの問題も考えてみる.

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

本日は「耕さない不耕起栽培はなにが良いのか?その目的はなんなのか?」ということをお話していきたいなと思います.
今回はかなり最新の環境科学会の学術論文を参考にしているのですが,近年は土壌のゲノム解析など土壌に住む微生物群の遺伝子解析などが行えるようになり,かなり具体的に耕すことへの影響,そして,農業が一体全体,私たちに何を与えて,私たちは何を失っているのか?ということが,分かってきてます.

また,近年注目を浴びてる,不耕起栽培の理屈も分かってきています.
不耕起栽培は,土壌にどのような効果があるのか,詳細な情報が,ある程度,頭の中でまとまったので,お話したいなと思います.

参考にした論文は横浜国立大学大学院の「熱帯地域における農業活動に対する土壌微生物群集の変動」ですね.こちらの論文は,熱帯地域を取り上げているのですが,温帯地域でもさほど同じような理屈が成り立ちます.現在は,温暖化での影響で,日本の本土もかなり暑いので,かなり参考になると思います.

本論文で議論されているのは,インドネシアですが,現在,熱帯地域では,森林から農地への転換が多いと言われてます.
そのせいで,表層土壌が壊れて,劣化がすごいと,なので,持続可能な農業を行うためにも,やり方をアップデートしていきましょうね.というお話です.

これまで,森林だったところが開拓され,農地化しております.農業というのは,もちろん耕しますし,化学肥料や薬も使うと,
これによって,土壌有機物が急速に失われていく,さらに土壌流出なども同時に起こり,農地開拓の問題が大きくなっているといいます.

現在の農業は自然産業というよりも,科学産業なんですよね.
大部分ではないですが,ひどいところ,一部では環境破壊ともとれると,なので使い方,やり方が大事です,
もちろんこれは,膨大な人口を支えるための大事な産業なので,これは人類のライフラインなんですが,一方でこういう自然破壊も起きうる,ということも頭の片隅にでも置いておくと良いかと思います.

例えば,本論文で紹介されていて,心に刺さったのが,肥料投入量に対して,作物の単収が上がらないケースが増えていると,そうすると,さらに再度薬品でカバーしちゃうと,っていうのが徐々に積み重なっていき,見た目は自然っぽいんですが,本来の自然の状態からは遠のいていってしまう.なので,近年,農薬や化成肥料,いろんなものがありますが,使用者のリテラシーが求められているんですね.

農薬の話は,以下の記事をご覧いただけたら幸いです.

話を耕すということに戻します.

不耕起栽培は,土壌有機物の維持に良い!?

不耕起栽培は,土壌有機物の維持に良い.

これはなぜ良いのかというと,土壌有機物は,餌資源として,土壌生物の働きを支えているからです.
土壌生物は,土壌微生物も含みますけれども,彼らが,生態系の最も根幹的な役割を担っております.

つまり,私たち人間も,生き物の一部ですが,いろんな生き物がおります.
これら生き物を食べて,私たちは生きておりますが,この生き物たちは,食物連鎖のなかで活動し,生態系の構造を守り,循環しているのですよね.これの祖となるものは,土壌生物なのですよね.これの餌が土壌有機物ですね.

土壌有機物というのは,物質循環をさせるための餌なので,これがないと,地球の生態系がうまく循環しないのですよね.

不耕起というのは,耕さないので,作物や雑草の植物遺体が,土壌表層に蓄積して,土壌有機物量が増える,その結果,土壌微生物が減らないのですね.
そこから生態系が生まれる.さらに,耕さないことで,土壌侵食や土壌炭素の放出を防ぐという,環境の面からも利点があると言われます.
今回,ここには,触れませんが,そういった一面もあります.

本論文では,不耕起栽培で糸状菌のバイオマス(生物の量)が耕起に比べて,約2倍に増加することが挙げられてます.
耕すことにより,菌糸の切断がなくなるためだと考えられています.
森林だともっと多いんでしょうね.

糸状菌の菌糸の発達は,土壌の団粒化を促進することが知られております.


不耕起栽培だと,徐々に団粒構造が生まれてくるという理屈がこういった理由なのですね.
耕してしまうと,土壌の攪拌によって,土壌微生物が死滅してしまうのですね.

この論文では,土壌のゲノム解析をしているのですが,表層土壌5cm程度までですが,やはり耕起地よりも,DNA代謝遺伝子の存在割合が高かったと報告されてます.
つまり,有機物が多いんですね.

有機物の炭素も,実はある程度わかってきております.
慣行農業の方は,草ごとひっくり返して,耕しますが,あれによって,土壌中の,難分解性易分解性有機物炭素の濃度が変わってくるといいます.

耕す栽培だと,年々,土壌中に,難分解化した炭素分が多いと,これは,ちょっと専門的な話になりますが,糖の代謝遺伝子や,多糖類を分解するグリコシダーゼの生産を行う有機物が多いと,そして多糖類は,土壌で粘土鉱物と結合して,難分解性になる,と言われております.
なので,徐々に畑の土が,微生物が活動しにくくなる環境になるんですね.

不耕起栽培では,これも専門的な話になりますが,可給態リンや交換性陽イオンの濃度が上がり,代謝回転速度の速い微生物が増えるのですね.不耕起栽培の土壌には,難分解性炭素がチリとして残らず,易分解性炭素が多くて,微生物活性が良いとされております.

とにかく,専門的な話で,伝えることが少し難しかったのですが,参考にした文献をぜひ,ご一読ください.

僕も,完全に,農業は不耕起が良いとは思っておりません.
原子力発電を停止したら,電気代が上がるということと同様に,慣行農業を減らすと,明らかに,野菜の値段はすごいことになります.おでんの大根が,おでんの豚足くらいなると思います.家畜の資料代もあるので,おでんの豚足は,ステーキくらいになるかもしれないですね.

ただしかし,私たちが住む地球,長期的に,人類が生活をしていく上で,こういった知見をもとに,私たち一人一人が,どのようなことに協力できるか,そういったことを模索することは大事なのかなと思います.ほうぼうで申し上げておりますが,不耕起栽培だろうが,なんだろうが,プランター菜園でも一度,ご自身で栽培をなさるということが,人々が,持続可能な農業を考える上で,一番近道になるのではないのかなと思っております.

けんゆー

ラジオをやっているので,作業をしながらでもどうぞ!!