虫に食べられる野菜も,菌にやられて病気をしてしまった野菜も,同じ.
この記事のポイント
  • 虫食い野菜は美味しいという誤解!それはただ単に野菜が弱っているだけ.
  • 病原菌への抵抗力も落ちる.
  • 栽培者側も野菜や果樹を弱らせないような環境を作っていかないといけない.

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

前回,虫食い野菜は美味しいというのは誤解だよ!というお話をしました.


虫に食べられるのは,窒素過多(環境の問題)だったり,抵抗力が弱っている健康的ではない野菜なのですね.

前回は虫に関してのお話をさせていただきましたが,今回は植物と菌についてのお話をしたいと思います.
虫に食べられる野菜もおりますし,菌によって病気になってしまう野菜もあります.
やはりどちらも,環境の問題もそうですが,野菜そのものの抵抗力が弱っていたりします.今日はそんなお話です.

野菜の持つ抗菌物質

前回は虫との戦いの中で,抵抗力という毒を獲得したというお話をしましたが,実は植物は病原菌とも戦っております.
僕らもインフルエンザや風邪などにはかかるのですが,実は植物もそうなのです.
そして人間も身体が弱っていて免疫力が落ちている時には,病気になりやすいのですが,植物もこれは一緒です.
弱っている野菜・健康的ではない野菜は病気にかかりやすいのです.

そして,ほぼ全ての植物は抗菌物質を持っていて,その数をあげると,枚挙にいとまがありませんね.

身近な例でいうと,オレンジやレモン,グレープフルーツの皮には「リモネン」という化合物があります.
これは,柑橘類の果実や種子を守る成分であり,洗剤(界面活性剤)として利用されております.

また,お茶の葉に含まれるカテキンも抗菌作用があります.
人間も植物の抗菌物質を抽出して,抗菌物質であるカテキンを享受しているのですね.
虫にやられてしまう植物は,こういったリモネンやカテキンなどのような植物が自ら生成する,抵抗成分がうまく分泌されておらず,菌にやられてしまうということが考えられます.

沖縄にはカーサムーチーと呼ばれるお餅があるのですが,そのムーチーも月桃の葉で包まれておりますね.
香りづけと抗菌効果があります.
餅粉をこねて,黒糖や紅芋などで味付けをして,月桃の葉で巻き,蒸して作るというものですが,これがまた美味しいのですよね.
旧暦の12月8日ですね.新暦だとだいたい1月あたりはムーチーばっかり食べているような気がします.

かしわ餅もそうですよね.
かしわの木の葉を使いますが,これも腐りやすい餅が腐らないようにするための抗菌活性です.

刺身を食べる時の,ワサビも抗菌活性です.鮮魚の腐敗を止めます.

食べ物だけではなく,衣類の染物も,かつては人間を菌から守るために植物を使って染められていました.
ジーンズは今では日常的に誰しもが履くパンツやファッションアイテムになってしまったのですが,もともとは作業着だったのです.
作業中はいろんな菌を触れますから,インド藍(あい)などで染めていました.

このように,植物は常に菌と戦うための防除をしており,そして私たち人間がいくつか恩恵をいただいていたりします.
健康的な植物の上に,私たちの豊かな生活があるのですね.

私たち人間が考える環境の問題とは!?

それでは,野菜や果樹などを栽培する私たちは,ただ傍観するだけでしょうか.
実は,植物たちが病原菌によって病気になる原因は,自身の抵抗力の少なさだけではなく,私たち人間の関与もあります.

実は病原菌が植物に感染するのは,そこそこ難しいのです.
というのも,感染する侵入経路が,植物が呼吸をするための気孔だったり,もしくは,傷口だったりするからです.
表皮を酵素で化学的に分解して侵入しやすくする能力をもつ病原体,例えば,りんごの黒星病菌(くろぼしびょう菌)などもいるのですが,基本的には病原菌側も植物体に侵入するのが難しいのですね.

気孔なども,病原体の侵入がちょっとでも確認されると,閉じるような構造になっています.
病原体の侵入に際してはエリシターという物質,抵抗反応を誘発する物質を病原体由来で出すのですが,植物はそれを察知していち早く気孔を閉じるような構造になっています.つまり,気孔だけの感染経路だとなかなか手強いのですね.

では,もう一つの侵入経路はどこかというと,傷口です.
無意味な剪定や,植物組織を傷つける行為が,大いに感染経路になり得るのですね.
そして,病原体は総じて,水分が好きですから,散水の際に,過度に葉っぱに水をかけてしまう,もしくは,換気を怠る,など環境の問題で,病原菌を培養してしまっていることも考えられるのです.

前回の,虫食い野菜の原因は,健康ではないという個体のお話もありましたが,肥料のやりすぎ,窒素過多の環境を作ってしまう,などもありましたね.
植物の健康も私たちの栽培のやり方によって,変わってしまうのですね.