過去10年で最も日本人を殺している植物は〇〇だった!
この記事のポイント
  • イヌサフラン(コルチカム)という有毒な花について紹介!
  • コルヒチンというアルカロイドが有毒にもなり薬ともなる!
  • 種無しスイカや痛風の処方薬にも!

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

今回は「過去10年で最も日本人を殺している植物は」という内容でお話をしたいと思います.
結論から言いますと,イヌサフランという綺麗な花が咲く植物です.

前回,過去10年で最も私たちを病院送りにしている植物は「ジャガイモ」である!というお話をさせていただきました.患者数は,過去10年で346人ですが,実はジャガイモの食中毒における死亡者数は一人もいません.

よく,スイセンもニラや玉ねぎと間違えやすい植物で,猛毒があるので,過去10年に180人もの患者数を出しておりますが,死者は1人です.
一方,イヌサフランはというと,なんと過去10年間8人もの死亡者を出しているのですね.
ハブに噛まれて死んだ人はここ20年で実は,一人もいませんが,より身近な植物の毒で亡くなられる方の方が多いのですね.
とても悲しくなりますね.

秋のこの時期に多発するのは,イヌサフランの球根の誤食です.
玉ねぎ・ジャガイモ,ミョウガなどと間違えて食べる例が報告されていて,そして,春には葉っぱもギョウジャニンニクなどと間違えて食べることがあり,多くの死者を出しております.

人間は,植物の毒を利用して,衣・食・住を豊かにしてきました.
例えば,コーヒーのカフェインを利用して眠気をとったり,また前回紹介した,除虫菊のもつ毒を利用して作ったのが,蚊取り線香でしたね.


しかし,悲しいことに,植物というのは,時には人間を殺めるほどの力があるのですね.
秋は,このイヌサフランの球根の誤食が多いので,そうならないように,このラジオが誰かのお役に立てたらなと思います.

イヌサフランとは!?

このイヌサフラン(和名)という花は,園芸用として「コルチカム(世界的な名称)」という名前で販売されていることが多いです.

このラジオの画像にも貼っておりますが,秋にピンクような〜薄い紫のようなとても美しい花を咲かせます.
六枚の花びら,直径がだいたい7cmとそこそこ大きい花であります.
球根は約5cmで,茶色の外皮に包まれております.

サフランという花(アヤメ科クロッカス属)によく似た花が咲きます.

イヌサフランの犬という意味は「犬死(いぬじに)」の犬から来ているようですね.
サフランという花は,香辛料や生薬に利用されるほど,価値が高い花なのですが,このイヌサフランは「全く役に立たない=犬死」ということからイヌサフランと名ずけられました.

東北地方の山菜で,ギョウジャニンニクという春の山菜があるのですが,それと間違えて誤食し,お亡くなりになられた方が多いです.
2019年には群馬県,2018年には北海道で2名の方が,そして2013年にも札幌で,,といった具合で,他にも新潟や石川県などと,割と北側の地域の方が誤食が多いようですね.

食中毒の原因になるのは,「コルヒチン」と呼ばれる有毒な物質です.
コルチカム」という名前で市販されているわけは,このコルヒチンと呼ばれる毒から来ているのですね.
聞いたことがありますでしょうか.

コルヒチンとは!?

このコルヒチン,摂取すると大変です.
細胞の働きを弱める毒です.

腸の細胞,動きが弱くなり,消化・吸収が難しくなります.
そして,骨の中の血液成分を作っている細胞の働きも弱めます.
血液の白血球や血小板が少なくなってきます.

下痢や嘔吐・呼吸困難などの症状が起き,最悪の場合,死に至ります.

では,なぜこのイヌサフランが売られているかというと,やっぱりキレイな園芸植物であるからだと言われております.

また,イヌサフランは全く役に立たない植物だと言われておりますが,実はこの「コルヒチン」という毒があるものを作っています.
これは何かと言うと,「種なしスイカ」ですね.

種無しスイカの生成に欠かせないコルヒチン処理

タネがない作物は大体,遺伝子セットが3倍体であることが多いです.

種子繁殖をする多くの植物は2倍体と呼ばれるもので,両親から半分の遺伝情報を譲り受けます.
例えば,人間も2倍体です.
お父さんとお母さんの両方からそれぞれ23本ずつの染色体を1セットとして受け取り(配偶子),それぞれが対になり,一つのゲノムとなります.
両親からそれぞれ同数の染色体をもらい,そのセットとしては2つで,これを2倍体と呼びます.
2倍体であると,減数分裂(染色体の倍加→2回の核分裂)によって両方の親方の配偶子が元の体細胞の半分になっているので,上手く両方の染色体が対合するのですね.

染色体の詳しいお話はまたどこかで時間を作って取り上げます!とにかく私たちは2倍体です.普通のタネで繁殖する植物は2倍体なのです.

バナナもタネがありませんが,3倍体,種無しスイカもコルヒチン処理を行い3倍体を作ります..
実際には,コルヒチンによる染色体の倍加(染色体異常)を誘発する作用を使って,4倍体のスイカを作り,2倍体のスイカと交配させて3倍体のタネなしを作ります.

痛風にも効く!

また,このコルヒチン,なんと痛風の処方薬にもなっております.

この物質は痛風薬としても薬事法で認可,販売,処方されているのですね.
風が当たっただけでも痛む!という苦しい病気があるのですが,その痛みを和らげる効果があると言われております.
毒薬変じて甘露になる」という言葉あるのですが,その通りですね.

イヌサフラン,全く役に立たないという犬死という言葉から,名前がついておりますけれども,きちんと,新品種の生産・医薬にまで応用されているのですね.