白菜の黒い点々の正体は「ゴマ症」!甘いとか美味しいとかの根拠はない.
この記事のポイント
  • 白菜でよく言われる「黒い点々」がある方が美味しいの嘘.
  • 作物は,窒素が多いとあまり良くない.(虫もくるし病気も出るので,薬が必要になる.)
  • 黒い点々がある白菜を特に気にして選ばなくても良い.

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

本日は「白菜の黒い点々について」解説していきたいと思います.
実は,Twitterで某農家さんがこんなツイートをしておりました.

【農家から切実なお願い】
白菜に『黒い点』があっても

食べてください!
食べてください!
食べてください!

この黒い点は『ポリフェノール』なのです!

急激な寒さにあたると発生する生理現象で,凍結しないようにと環境に対抗したので甘みがあって美味しいのです!

ぜひ召し上がってください!

というツイートなのですが,かなり話題で6万件近くのリツイートと,17万件近くのいいねが押されております.
かなり拡散されているものです.

けんゆー

12月23日16時現在なので,もうちょっと伸びるのかな?

黒い点がある方が,甘みのあるとの主張なのですが,実は,科学的根拠はないのですよね,むしろ生理的異常による障害なんですよね.
影響力のある農家さんが安易に嘘をつくのはどうなのかなと思い,研究結果を取り上げて解説させていただきました.
急激な寒さに当たると発生するというのは,これも実は嘘で,この発生原因は,既に30年前ほどから明らかになっております.

白菜のゴマ症

白菜の,この黒い点々,実は「ゴマ症」と呼ばれるもので,病気ではなく,生理的異常による障害なのですよね.
確かに,ポリフェノールが集まっているものですが,これは組織崩壊を示すものなのですね.
実は,ハクサイのゴマ症は,1966年頃から,連作障害の一端として発生するようになりました.
やはり単一作物の作付けや,化学肥料などの発展に伴って現れたものなのかもしれないですね.

黒い点々,いくつかの原因があります.

  • 窒素の多量投下.
  • 微量元素の銅の過剰,そして鉄欠除によって発生.
  • 低温障害,体内の窒素代謝や水分代謝異常.

ハクサイのゴマ症発生要因に関する研究(1984)では,窒素が多いことによるゴマ症の発生があることを認めております.
また,硝酸アンモニウムよりも,塩化アンモニウムを施用するとゴマ症の発生が多いとの報告でした.肥料の話ですね.

本論文では「ハクサイのゴマ症は,窒素が多量な証拠,そして土壌中の銅の溶解性が高まり,窒素とともに,銅が多く吸収され,主脈中の硝酸体窒素の集積,銅を含む酸化酵素が関与している」といいます.

黒い点々について!

富山県農業技術センターの研究報告「ハクサイゴマ症の発生とその防止法に関する研究(1991)」でもいくつか面白い報告がなされております.
ハクサイが成長して,重量が増えていくとき,葉っぱが肥大化する際に多く発生します.窒素をたくさん吸収する場合でよく起こるといいます.

収穫直前にも,急激に黒い点々が増える場合もあります.
これは,収穫直前,古い成熟した葉っぱで多く,外側の葉っぱが黄化もしくは脱落が激しい株で発生するものでした.
あまり健康的な株ではないもので発生しているということですね.

気温ですけれども,例年に比べて,気温が高く,降雨量が少ない方が,ゴマ症が発生するということが分かっております.
もちろん,全体な生育も劣っていたようです.

さらに品種の違いによってもゴマ症が発生しやすいということがあるようで,本論文では「ひばり」という品種が黒い点々が多く現れたといいます.

また,窒素が多いと,ハクサイは,軟腐病(なんぷびょう)と言われる病気が発生する可能性が高いです.
薬剤防除として,銅水和剤がよく使用されます.
本論文でも,銅剤の散布によりゴマ症の発生が助長されることが明らかになりました.
本論文では,銅が過剰に与えられた場合,植物の成長は阻害され,体内生理的には,酸化酵素活性が上昇されます.こういった作用がゴマ症の発生を誘発しているといいます.

発生メカニズム

窒素を急激に吸収して,組織が肥大化します.ちょっと科学的な話だけしておきます.
そうなると,コロロゲン酸が生成されて,ポリフォノールオキシダーゼの活性が誘導されます,その結果,コロロゲン酸ポリフェノールに変わります.
このような組織肥大に基づく,ポリフェノール活性だけを切り取って,ポリフェノールだから人間が食べた時に身体に良いんだ!という主張だと思うのですが,これは科学的にはわからないですよね.植物体の持つ生理異常を示しただけなものです.

これは,組織が崩壊傾向にある場合,このようなことが起きます.
また,こういったポリフェノールの集積がある組織では,アスコルビン酸(ビタミンC)の含量が低下しているということが知られております.

貯蔵温度とゴマ症の関係

貯蔵する条件によってもゴマ症が発生することがあるようです.

外葉(がいよう)の除去をした場合は,ゴマ症の発生が多くなります.
また,外葉を除去すると,ハクサイ自体の重さも軽くなり,萎凋も顕著に現れるといいます.

また,貯蔵温度ですが,実は低温環境で保存をした方がゴマ症の発生が高くなります.
本論文の実験では,2℃の貯蔵温度で,ゴマ症が多くなります.
某Twitterの発言では,急激な寒さにあたると発生する生理現象というコメントが見られたのですが,貯蔵に関してはそうですね.

20℃程度の保存がゴマ症がほとんど認められず,良いかと思われます.

結論

黒い点々があるもの,食べられますけど,その点々を好んで選ぶというのもしなくても良いですよ.
むしろ,ゴマ症がでていないもの,正常なものの方が,より健康体な個体だと考えます.
考えてみると,ゴマ症がでている個体が甘くて美味しいのであれば,1966年から長年かけて,市場の白菜は,黒い点々だらけになってますよ.
そっちの方が,甘くて美味しいというなら,そうなりますよね.
そうなってないということは,そうなってない理由があるのですよね.