【栽培者が教える】グァバについて徹底解説,特徴,育て方,栽培方法,遺伝学,育種,増やし方,品種など.
この記事のポイント
  • 学術的な論文や書籍を引用して解説!
  • 沖縄県で実際に栽培してる実経験を踏まえて解説!
  • ラジオもあるので聞いてみてね!

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

今回はグァバについてお話ししていきたいと思います.
今回の話は,Tropical Fruits, Volume 2 (Crop Production Science in Horticulture Book 24) (English Edition)を参考にしております.

また,ラジオの方でも解説してます.
ゆっくり流し聞きをしたいという方は,こちらがオススメです.

けんゆー

それではどうぞ楽しんでー!

前書き

フトモモ科に属してるグァバは,80以上の属と約3000種が世界に分布しております.
熱帯地域,亜熱帯地域,アメリカ大陸,アジア,オーストラリアに広く分布してます.
木の種類も様々で,高木から低木まで,多くの種が存在します.
多くは観賞用,その他,食用で果樹を収穫したり,葉っぱを取って茶にしたり染料にしたりなど,他にも油や香辛料のために栽培がなされております.

重要な属と種

フトモモ科の80以上の属のうち,食用の果実として人気があるものは,Psidium (バンジロウ属),Eugenia(ユーゲニア属),Syzygium(フトモモ属),Myrciaria(ミルキア属),そして Feijoa(フェイジョア,アッカ属)です.

けんゆー

ピタンガの学名はEugenia unifloraで,ユーゲニア属だね!


けんゆー

Syzygium(フトモモ属)は例えばレンブなどがあるね!


けんゆー

Myrciaria(ミルキア属)は例えばジャボチカバなどがあるね!

Psidium (バンジロウ属)

この属は,アメリカの熱帯地方の常緑樹で,約150種の種類があります.
グァバ(Psidium guajava L.)は,世界的にも最も知られていて,最も分布している種です.
コスタリカやグアテマラなどの中米にはゼリーグァバ(P. friedrichsthalianum)という名で知られる小型のグァバがあったりします.

グァバもフトモモ科では重要なフルーツになっております.
通常は,枝にそって対象に葉っぱがつき,新梢の枝元から3~4節目に両性花が咲きます.
2~3個の花が咲き,果実がなります.
花は,4~5つの花びらと,無数の雄しべがあります.
果実部分は,花托が大きくなって実になります.

けんゆー

りんごとかイチゴのような感じだね!

原産地と分布

グァバ(Psidium guajava L.)は,アメリカの熱帯地方が原産です.
コロンブス以前の時代におけるグァバの普及は曖昧ですが,スペインの探検家がまずグァバをフィリピンに持ち込み,その後ポルトガル人がインドに持ち込み広めました.

種子の生存期間が長い品種が豊富にあるため,熱帯地方全体に速攻で広がりました.
現在グァバは,様々な国の人々が,自分たちの地域に固有であると見なす程度に,帰化しております.
現在は,亜熱帯地域でも栽培がなされております.繁殖力が強く,牧草地では,侵略的な植物として敬遠されているところもあります.

沖縄への導入は1800年代ごろだと言われております.
当時,その頃では台湾で栽培がなされていたので,その時に沖縄に入ってきたであろうとされてます.

グァバは,様々な種類の土壌に適しています.
水はけが良く,肥沃の方がよく育ちます.
肥沃ではないところでも成長はします.
pHが5~7の土壌でよく育ちます.
pHが5未満または7を超える土壌での栽培は,それぞれ亜鉛欠乏が起きたり,鉄欠乏が生じたりします.
グァバは,塩分に対してかなりの耐性があります.
実生苗の成長の閾値は1.2dS/mであり,14dS/mの場合,50日後の生存率は25%になります(Tavora, et.al.,2001).果実のサイズとアスコルビン酸は,塩分が5dS/mに増加すると減少します.

けんゆー

ジーメンスというのは,電気伝導度を表す単位で,肥料がどのくらい溶けてるのか,塩分などの物質がどのくらい溶けているのかを表す指標.

気候

グァバは水分を好む果樹なので,水は豊富にあると最高です.
降雨量は,600mm/年以上である必要があります.
1000mm~2000mmが最適です.
日本の平均が,1700mm,沖縄が2000mmなので,かなり適しております.

けんゆー

世界の年平均降雨量は800mm程度.

栄養成長の時や,生殖成長の開花・果実の発達の時には十分な水分が必要です.
木は最大6ヶ月間,干ばつに耐えますが,長期の干ばつは,落葉を引き起こします.
花は,梅雨明け直後に多く発生します(熱帯地域では).

グァバにとって理想的な気候のパターンは,年間をかけて乾いた状態と湿った状態を交互に繰り返すことです.この乾いた状態と湿った状態のサイクルが,花を誘発するサイクルになっております.
果実拡大中の低水分状態は,果肉の縮小につながりますので,気を付けてください.

温度

グァバは,水分が豊富な暖かい地域で最も効果的です.
霜がなければ,海面から標高1500mを超える場所でも成長します(Maggs, 1994).
最適な温度は23~28℃であると報告されており,開花中にこの範囲外の温度になると結実が大幅に低下します.

しかし,ハワイでのグァバの生産は,15.5℃から32℃の間でよく育つと報告がされております.
グァバは,熱帯に自生しているにも関わらず,亜熱帯地域または最大1700mの高度で生産することができます.この強い適応性により,世界の多くの場所で見られ,時には侵入雑草とみなされるようになりました.

若い苗のうちは,-2℃で枯死すると言われております.
沖縄など,夜間温度が5~7℃の地域では,生育が止まり,葉っぱが紫色〜赤色に変色します.

乾季の冬の気温が低いと自然に落葉し,温暖な気候と適度な降雨がある時期であれば,すぐに開花が始まります.特定の場所では,冬の間(1-6月)は寒冷被害からグァバを守るために,灌漑を差し控えてる場所もあるようです(González et al., 2000).

グァバの光飽和点は925μmol/m^2s(5.4万lx)を超えています.
日光の持続時間が長いほど,枝の成長が大きくなります.
そして,種から開花するまでに約2~7年かかると言われております.

実生の樹もしくは,接木の樹はある程度の風に耐えることが可能です.
しかし,挿し木によって増やされた木は,初めの3年間は強い風は当てない方が無難です.
日本で挿し木による繁殖の例は聞かないですが,海外などでは,されているようで,最初の3年間は,65km/hの風によって,根っこが抜ける可能性があります.
挿し木により成長した木は,根の成長よりも上部の成長の方が早いため,根っこが浅い位置にしかありません.そのため,経済的な栽培を行うためには,防風林による風除けは必要です.

一般的な特性

グァバは,熱帯果樹の中でも低木ですが,水分条件が良い環境では,高さ6~9mに成長します.
開張型で大きく広がり,幹の直径も30cm以上になると報告されてます.幹は短く,基部から自由に枝が分岐しているという場合が多いです.
樹皮は滑らかで,緑がかった茶色のような色をしてます.
枝はしなやかなのでs,風で折れる,ということは滅多にありません.
ペアで配置された葉は,長さ10~18cmの長方形または楕円形で,上面は滑らかで,下面は細く,縞模様が目立ちます.

フラワーズ

花は,葉っぱの脇から2~3個,複数に発生します.
両性花の白い花が咲きます.直径は2.5~3.5cm,4つまたは5つの花びら,多数の雄しべ,一つの雌しべがあります.子房はそれよりも下にあり4つまたは5つの胚珠があります.それぞれが中軸胎座(胎座:雌しべの一部で胚珠が付いているところ)に多数の子房を含んでいます.

花の形態は,自家受粉に有利ですが,植物間でかなりの相互受粉が起こります.
ミツバチが重要な花粉の交配者です.
開花から果実が成熟するまではだいたい3.5ヶ月間かかります.

花は,品種にもよりますが,朝の気温に応じて,午前5時から7時の間に開きます.
萼(がく)は通常,開花時またはその直前に裂開します.

インドとハワイでは2回の開花ピークがあります.

受粉に関して

ほとんどのグァバはほとん人間の介入を必要としない自然受粉で大丈夫です.
インドネシアでは種無しの3倍体品種が出回ってますが,それ以外の2倍体の品種では,結実率はかなり高いです.
花が咲いて48時間以内に受粉が完了させると,90%もの結実が得られます.
ハワイの品種「Beaumont」の雌しべの柱頭が,雄しべを受容できる期間が48時間であると報告されてます.
3倍体の種無しの品種の結実率を上げたかったら,2倍体の品種と混植することが良いと言われてます.

1968年に,自家受粉と他家受粉の結実率が調べられていて,その研究結果を一部上の表で引用します.
例えば,「Beaumont」だと,自家受粉で100%結実することが言われていて,他の花粉では60~70%程度,結実します.
一方で,インドネシアの種無し品種は,受粉に相性があるようです.
これらの相性は,花粉管の成長阻害が起きた結果,そうなるということです.

化学薬品による果樹の生産.

種無しのグァバを作るために,成長抑制剤の使用が試みられてきました.
オーキシンのような化合物は,フルーツの落果を誘発しません.
ジベレリンを適用すると,結実が増加し,果実に含まれる種子が少なくなるということが知られてます.
また,アスコルビン酸(ビタミンC)や果肉部位の増大など品質も上がったようです.

まだ咲いていない花の蕾を切り落として,切断面にジベレリンとラノリンの混合物を塗ると,種無しの果実が得られます.この処理で得られる果実は,未処理の花から得られる果実よりも大きくなります(Shanmugvelu, 1962).しかし,萼の端が腫れぼったくなるということです.

果実

グァバは,直径が2.5~10cmのサイズで,多くの種が入っている果実です.
形状は,球状,卵型,細長い形状,洋梨型などの形になります.
皮は熟すと,黄色になります.
果肉はピンク,赤,白,黄色など多くのバリエーションがあります.
皮の質感は,滑らかなものも荒っぽいものもあります.
肉厚ですが,品種によって暑さが異なります.味と香りも品種や実生の個体群によって大きく異なります.
低酸,甘味タイプ,糖度も酸度も低い無味無臭タイプ,高酸タイプなど色々な味があります.

けんゆー

なので,一口にグァバといっても全然個性が違うよ!

果実の成長は,シグモイド曲線に従います.

Pulpというのは,果肉の成長を示します.
果実の成長は,栽培環境の温度にもよりますが,約120日から220日以上まで変化する可能性があります.

けんゆー

栽培品種によっても異なるよ!

植物学および遺伝学

Psidium(バンジロウ属)は,グァバ(P. guajava)を除いて,2倍体,4倍体,6倍体,8倍体の種で構成されます.染色体セットは2n=22なので,2倍体の場合は,両方の親から11本ずつの染色体を受け取ります.

けんゆー

ちなみに,人間は両親から23本ずつ受け取り,自身の染色体数は46本(2n=46)になるよ!

グァバ(P. guajava)の場合は,大体の場合は2倍体ですが,3倍体,4倍体,異数体などが報告されてます.
種無しの栽培品種は,大体は3倍体で,異常な減数分裂を行うため,種子が形成されません.
花粉は機能しているが,花粉管の成長が阻害されており,配偶体型の自家不和合性を示します.
受粉は果実の発達を刺激します.

育種

グァバの花の形態は自家受粉に有利であり,35%の異系交配が報告されてます.
これは,植物の生存の観点から見た遺伝的多様性を維持するためのものであると考えられます.
そのため,他家受粉による遺伝的変異は種の存続として必要です.
種子の多い果実であるため,病気や虫などの特性の害虫に強いです.

遺伝資源の収集は,育種や繁殖によるプログラムにおいて必要であります.
そのため,Seth氏は,いろんな品種の交配に関する研究レポートをまとめており,例えば,
「BehatCoconut」と「Lucknow‐49」, 「SI」と「Behat Coconut」,「BehatCoconut」と「AppleColour」を交配させた場合は,結実が成功しなかったことを示しております.これは3倍体または他の遺伝的要因に起因することを報告してます.
まだまだ遺伝的な研究が行われると良いですね.

選択と評価

育種のプログラムで大事な選択の基準は以下です.

  • サイズが大きく(200~340g),種子が少なく,果肉が厚い!
  • 生食用の場合は白,加工用の場合は濃いピンク!
  • 香りが良い.酸度が0.2~0.6%.
  • 3000mg/kg以上のビタミンC.
  • 石細胞が少ないこと.
  • 収穫後の良好な貯蔵期間.
  • 病気や昆虫に対する耐性.
  • 矮性の低木.
  • 高い収量.

栽培品種

グァバには多くの品種がありますが,一般的に栽培されている品種では,白とクリーム色の果肉が甘い傾向にあり,ピンクや赤い果肉の栽培品種は,酸度が高く,加工目的で作られます.

生殖方法

有性生殖

種子は水はけの良い培地を使用すると,90%以上が15~20日程度で発芽します.
大体は,接木のための台木を作るということがなされます.
植え付けから約1~2年で生産を開始し,樹齢4年で最大生産に達するという報告もあります(Avilan, 1988).

けんゆー

沖縄では,早くても2~3年程度かかるかなという感じ!

無性生殖

接ぎ木に関しては,切り接ぎや腹接ぎ,芽接ぎ,寄せ接ぎなどが行われますが,他の果樹に比べて,接木の成功率が低いことが報告されております.

本書籍(Tropical fruits)によると,接ぎ木を行う際は,穂木または芽を約2週間前から準備する必要があると記載があります.何をするのかというと,使用する枝の環状剥皮,または,葉っぱを落とす,ということが必要であるとされます.これをすることによって,枝についている腋芽が拡充し,接木されたときに成長が大幅に加速するようになります.

本書では,台木に使用する苗は,鉢に入っている状態だと直径が大きい方が芽接ぎに適していると言われております.早めにやりたいと思う方は,台木の直径が最低でも12mm~20mmになってからやってください.

一方,米本先生の書籍「熱帯果樹の栽培」には,グァバは寄せ接ぎが最も多く行われている手法であると言います.
寄せ接ぎというのは,母樹(穂木になる木)の枝を切り離さずに引っ張って,周辺に台木用の実生木(鉢植え)を置き,そこに接なぐ,というものですね.
台木の幹と母樹の枝を寄せて接ぎ木するというものです.
2~3ヶ月で癒合するので,後は,母体から切り離すという流れですね.

取り木も挿し木も,可能のようですね.
取り木は,2~3cmの幅を環状剥皮して行う,ということです.
米本先生の本によると,5月~7月が適期のようですね.低温期は発根に時間がかかるようです.

挿し木の場合は,インドール-3-酢酸(オーキシン)により処理されたもので行うと,44%が発根をしたという報告があります(Jelicoeur, 1962).それでも半分くらいなので,他の果樹に比べるとちょっと難しいような感じもしますね.
発根能力には,個体差がありますが,大体6週間から2ヶ月程度だと言われております.

植え付けの間隔

グァバの木の成長は比較的早く,周囲に広がる傾向があります.
なので,ゆとりをもって栽培したい場合は,4~7×6~7.6m程度の間隔が良いということが言われてます.
これだと,1haに大体250本~420本程度です.
もっと間隔を狭くすると,例えば,1.5m~2.5m×4m~5m程度にすると,1haに対して,1000本~1500本になります.この場合は,積極的な剪定と将来的に混み合ってきたら間伐が必要になります.
熱帯温度下で,土壌水分が良好な場合は,1haあたり約1000本で植えられ,高さを3m未満に維持される場合は多いです.
台湾などは,南北方向に1haあたり大体600~1000本で植えられ,最初の5年間で高い収量をもたらすという報告がなされております.

灌漑

グァバは長い乾燥期間に耐えられる果樹ですが,やはり降雨量が多い地域でよく繁栄するものです.
栄養成長や,果実の発育には,十分の水分が必要であることが知られております.

仮に水損失がある場合は,週25~50mm程度の水を補充する必要があります.
世界的には,点滴灌漑,木下に灌漑するマイクロスプリンクラーなどが果樹生産に活用しております.
沖縄の露地栽培は,年間降雨量がグァバの求める水分量と同じくらいなので,大丈夫だとは思われますが,世界的には,こういった灌漑システムがあるのですね.
肥料の調整などもしやすいということから,こうしたかん水システムを採用しているところも多いです.

剪定

剪定のタイミングは,一般的には収穫直後が望ましいとされます.
葉っぱは,光合成をして炭水化物を作り果実の肥大化を助けるために,果実がついている間は剪定ができません.そのため,果実を取り終えてからの剪定になります.
これは,おそらくどの果実でも大体そうです.

剪定もいろいろな効果があって,グァバの場合は,剪定をすることによって,次回花が咲く枝が伸びます.
新しい新芽の成長を誘発するのですね.また剪定をすることによって,収穫ピークを揃えるという効果もあるので,そうした管理がなされます.