【アボカド栽培46】アボカドの3系統(メキシコ系,グアテマラ系,西インド諸島系)は今後修正される未来がある.
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けんゆー

こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.


けんゆー

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本日は,アボカドの系統を調べた研究を紹介するとともに,ちょっとした考察をかく.
現在のアボカドは,グアテマラ系メキシコ系西インド諸島系,の3つの系統が存在する.そしてそれら交雑種が存在する.

こういった3つの形態は,産地の考古学的な証拠から決められた側面が大きい.
当時は遺伝子による区別ができなかったため,産出した場所や,その個体群の持つ形態視覚的に区別される特徴から,〇〇系などといったものに分けられた人間の功績がある.
ただし,アボカドの場合,西インド諸島系というのは若干怪しい.
西インド諸島には野生のアボカドが存在せず,メキシコ系からの派生種をそう呼んでいるという事実がある.
一方で,西インド諸島系には,耐寒性や耐塩性,味質やサイズのデカさなど,他の2種とは違って特異的な違いもあり,これはこれで驚きだ.
【アボカドの歴史第一章】youtube動画に飛びます!

アボカドの栽培自体は,4000年から2800年前から始まっていたと推察されている.
この時期くらいからタネのサイズが大きくなり始めたという歴史的背景があり,そこから種の選抜が始まってきたのだろうと疑いの余地がない.
人為的淘汰がおこならないとタネやが大きくならないはずである.
(タネが大きくなったということは,すなわち,果実が大きくなったということである.)

一方で〇〇系などと名前が付き,積極的な選抜が始まったのは,1800年代後半からであり,まだ150年そこそこである.

アボカドの改良は,カリフォルニアでは,グアテマラ系とメキシコ系のそれぞれ野生種に近いもの,フロリダではグアテマラ系の野生種に近いものと,キューバから入ってきた西インド諸島系に近いものによって他系統間の交雑がなされ,現在食べられている多くの品種が生まれてきたと言われる.〇〇系みたいなわかりやすい指標があるのは良いものの,形態的官能的にそう言われているだけであり,実際に遺伝的にしっかり調べられてはいない.いや,調べる術がなかった.

アボカドの場合は,小花がたくさん咲き,花粉親も「これだ!!!」というのが非常に断定し難いはずであり,「この品種はメキシコ系とグアテマラ系のハイブリッドです!」というのも少々乱暴な側面がある.

現在は,遺伝子マーカーで色々と調べられるようになってきている時代であり,これから20~30年くらいでは,多くのハイブリッド種,もしくは〇〇系と呼ばれるものは修正される未来が来ると思う.

いや,そうならなければおかしい.

だって,100年前はそういった技術がないはずであり,とりあえず〇〇系と,ある程度の「目利き」でつけていたはずだ.
(それはそれで,良いことだ)

修正されることが科学である.

さて,その未来がきた.

遺伝子を調べてみた.

アメリカ遺伝学会から2008年に面白い文献が出た.

Tracing the Geographic Origins of Major Avocado Cultivars,Journal of Heredity 2009:100(1):56–65

本文献では,現在栽培されている主要な33つの園芸品種の遺伝的な情報を調べ,〇〇系と呼ばれる割り当てを再検討している.
アボカドの持つ全てのゲノム解析が終了しているわけではないので,本実験によるところの推定値であるが,眺めるだけでも非常に面白い.

本結果を参照してみると,ベーコン94%グアテマラ系だと言われたり,フェルテ99%メキシコ系だと言われたりしている.
さらに,グアテマラ系と言われたハスが,メキシコ系(42%)とグアテマラ(58%)の遺伝情報をもつと示唆される.もしかしたら,このくらいの割合の方が,良質な果実になるのか?(良質とは!?笑)
もちろん,全ての遺伝子座を調べたわけではないため,これが完璧な最終決定ではないが,現在言われている〇〇系が,やはり当時の「目利き」からきているものであることは間違いない.

近年は,この遺伝子評価が加速しており,中国でも2020年に,在来アボカドがどこからきているものなのかを調べた文献などがみられる.
Molecular Markers and a Quality Trait Evaluation for Assessing the Genetic Diversity of Avocado Landraces from China
他にも,病気に関連する遺伝子の研究なども現在は盛んに行われており,多くの発見,もしくは品種改良が進む未来が十分にある.
また,このあたりもおいおい紹介していきたい.

今回の記事は,毎週金曜日に更新してるオンラインサロンのメルマガ「【No.161】アボカド品種に振られた三系統は間違いである?生産性を爆発的に上げるには?」からの一部抜粋である.アボカドについてもっと深い理解をしたい方,熱帯果樹についてもっと深い理解をしたい方は,ぜひご入会いただきたい.サロンメンバーには,全国各地の生産者がつながる「アボカドパーティ」のご入会もご招待してるので,あなたの果樹栽培がもっと楽しいものになると考える.ぜひ,興味のある方は,弊サロンにどうぞ!