- 牛糞堆肥が無機態窒素となるのは時間がかかる.
- 牛糞堆肥以外にも,有機物は時間がかかる.
- C/N比の概念も軽く復習.
ハイサーイ!
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こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
今回は「牛糞堆肥,土に入れて100日後,きちんと植物に吸収されるのか?」というタイトルで話していきたいと思います.
ここ近年流行りのタイトルがやけに長いアニメとか小説に乗っかって,具体性を持たせてみました.
最近は,有機農業や有機栽培などについてお話しをしているのですが,そういったやり方では,土に有機物を積極的に入れていく人が多いと思います.また,牛糞堆肥を毎年使っているよ!という方も多いと思います.
ただ,その牛糞堆肥,きちんと植物が養分を吸収できていると思いますでしょうか.
例えば,土に入れて100日後,どうなっているかと思いますでしょうか.
今日は,この辺の話をしたいと思います.
結論からいうとされている...が..
結論から言いますが,今回も問題形式にしたいと思います.
みんなクイズ大好きでしょう.
牛糞堆肥は100日後,どうなっているでしょうか.
4択で答えてください.
- 植物の栄養素として10%程度が吸収される.
- 30%程度が吸収される.
- 60%程度が吸収される.
- 分からない.
どうでしょうか.
考えることによって,記憶に定着しやすいですから,ぜひ1から4のうち番号を選んでいただけると嬉しいです.
さて,それでは正解を発表したいと思います.
現場の観測や,現在の研究などの証拠から,どうやら1が有力であろうと思われますが,厳密には4を選んだ方が正解です.
「分からない」というのは,もちろん,どの植物を育てるかなど,植物においても吸収度合いは変わるし,その他多くの環境要因などもあるので,そういったことを深く考えて「分からない」と答えた方は賢いです.
そんなインチキ問題を作るな!という声もうっすら聞こえてきますが,ただ逆に,この肥料は効くよ!という謳い文句の宣伝などは,気をつけた方が良いです.土壌にもよるし,環境にもよるし,作物にもよるので,一概に答えられないわけだね!このクイズが,今後あなたが,インチキ商売に引っかからないようなワクチンとして機能していればいいのかなと思うよ!
ちょっと余談だけれども,2002年にノーベル物理学賞をとった小林昌俊(こばやしまさとし)博士,ニュートリノ天文学の研究をされている方がいるのですが,この方が,かつて生徒に出した問題で,「もし世の中に摩擦が無くなったらどうなるか記しなさい?」という問題を出したそうです.この問題,個人的にすごく好きな問題なのですが,で,この問題の正解は,何かというと,なんと白紙で提出した人が正解でした.何かの解答を書いた人は全員もれなく不正解とした,という鬼ムズのような試験があります.
摩擦がなければ,ペンも滑って文字が書けないでしょうというトンチの効いた理屈なのですが,世の中には,このような問題もあるので,僕の4択も許してください.
牛糞堆肥100日後の結果.
今回,4択の問題を出させていただき,1の「植物の栄養素として10%程度が吸収される」というのが,最も近いのでは,ということだったのですが,ここを説明します.
基本的に,堆肥というのは,土壌改良のために使うよとか,土作りのために使うよ!という人も多いと思いますが,その理由は,窒素が無機態になるスピードの遅さにあるのですよね.以上の図は,おなじみの「基礎講座 有機農業の技術」からの引用です.書籍買ってください.
そして,もと文献はこちらです.
「水田における有機物管理が土壌の有機物集積,窒素供給能,水稲生育におよぼす影響」です.
有機物を連用したときの,窒素の放出,ここでは,無機態化と呼ばれる植物が吸収できるような形になるまでの時間を示してます.横軸が時間ですね.50年の時間があります.縦軸は,窒素放出なのですが,マイナスもあります.有機物の中には,それを土壌に入れてしまうと,窒素飢餓といって,土の中の窒素が抜けてしまうというマイナスな影響もあります.
さて,牛糞堆肥なのですが,実は,本グラフを確認すると,栽培期間で100日くらいたっても,入れたものの10%程度しか無機化されてないわけです.以上のグラフは毎年連用して堆肥を使っている結果ですが,5年経っても,40%もいかない訳です.
植物が消費する窒素を考えると,これだけでは収支が合わないということもあるわけです.
また,オガグズなどの有機物は,土壌に入れると,かえって窒素がなくなります.
分解しにくい有機物は,土の中の微生物が逆にそれを分解するために,土の中の窒素を使ってしまうという現象が起きます.
分解されて,窒素として還元されていくのは,30年後とか,驚異の結果が報告されております.
僕らも,木屑をバナナの株の周りに撒いたら,窒素が抜けて,葉が黄色くなり,成長が思うようにいかなかったという経験もあります.実際にそのようなことが観測されて有機物の投入は,分解のされやすさなども考慮しないと逆に危険だなと感じることもある訳です.
C/N比という概念.
この分解のされやすさ,されにくさというのは,主にC/N比に依存するところもあります.
C/N比というのは,炭素比とも言いますけれども,その有機物中に含まれる炭素Cと窒素Nの比です.
炭素はカーボン,窒素はニトロジン,それぞれの頭文字をとったものです.
N分のCと書きますが,つまり,有機物中の全炭素を全窒素で割った値なのですね.
C/N比という概念も,一度ラジオでお話ししてます.ナンバー32です.
この記事のポイント 有機物資材のカタさ,やわらかさを表す指標! C/N比が大体20程度が理想の値. 炭素にも, …