病害虫への防除,薬剤を使う前に,
この記事のポイント
  • 防除の意味は「予防」と「駆除」.予防が大事である.
  • 病害虫は3つの要因が揃って発生する.
  • 薬を使用した除去は実は非常に難しい.

けんゆー

ハイサーイ!


けんゆー

記事リンク付きの感想ツイートなどは掲載される可能性あり!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

今回は「病害虫防除の理論,薬剤を活用する際に一度考えるべきお話」をさせていただきたいと思います.
家庭菜園や,実際に農業をされている方で,野菜や果樹を育てていく過程で,やはり最も問題になるのは,病害虫の管理もしくはそれとどう向き合うのかという考え方だと思われます.僕たちは,完全無農薬で果樹や野菜の栽培をしておりますが,病害虫と向き合ってないのかと言われると,そうではないです.病害虫が発生するのにも理由があって,どう対処していけば良いのか?,この辺を考えるのは,ちょっと楽しいです.
生活がかかっている方は,「虫が発生したら楽しくないよ!」と思われる方も多いと多いとそもいますが,虫が発生することは普遍的な事実だとすれば,ここは変えられないのであれば,せっかくだったら楽しんだ方が良いかと思うのです.

なぜ発生するのか?どんな意味があるのか?彼らの生命は何で維持されてるのか?どう増えていくのか?どう減っていくのか?構造上,どうなっているのか?この辺の思考は,病害虫管理が楽しくなるきっかけの一つになるかもしれないですね.

なぜ薬剤を減らさなければいけないのか?

薬を使いたくて使ってる,という方はもちろん少ないと思います.
ただ,一方で,代替する手段を模索してるのか?もしくは,使ってしまった結果,近未来的または長期的にどのような影響があるのかを想像できる人もそんなに多くないと思います.

適切な農薬,回数や濃度を守って使った野菜及び果樹が,健康を害するかと言われると,それは違うのかなとも思います.
農薬は悪だと,一辺倒に考えてしまう,というのももちろん,違います.
第一次産業を支える,重要なツールです.

ただ,近年だと,資材費の高騰などがあり,果たして薬剤の使用が継続的なのか?を考えなければいけないですし.他にも,周辺環境の悪影響,もしくは,使用者,生産者自身への悪影響,さらには,繰り返し散布を行うことによる虫の薬剤抵抗性の獲得があります.農薬が効きづらくなるということですね.

この辺は,以前のIPMの方で話をしました.

例えば,ハダニです.
日本では,ミカンハダニカンザワハダニが顕著です.
また,1990年代以降,ナミハダニの薬物抵抗性の発達が世界的に問題になってます.イチゴなどを栽培されてる方は深刻ですね.
(参考文献:「ハダニの薬物抵抗性,日本農薬学会,京都大学大学院,2009」)

他にも,アザミウマですね.
ミナミキイロアザミウマ,有機リン系剤などの殺虫効果が低いこと.
ネギアザミウマのピレスロイド系の殺虫効果が低い個体群が多いこと.
チャノキイロアザミウマでネオニコチノイド系の殺虫効果が低いことを報告した論文があります.
(参考文献:「大阪府内におけるアザミウマ類の薬剤防除効果の現状と新たな防除体系,2019.」)

また,コナジラミも現在20種類以上のバイオタイプが確認されておりますが,その中でもバイオタイプBとQが世界的に重要な害虫になっています.
日本では,2005年に海外からバイオタイプQが入ってきており,これが殺虫剤に対して抵抗性が発達しており,問題視されております.
(参考文献:「アブラムシとコナジラミ媒介性ウイルス病の防除をめぐる諸問題.2017」,こちらの論文はコナジラミというよりも,害虫に対する姿勢全般が楽しかったです.)

こういうこともあり,同じ系統の薬剤を使い続けずに,薬剤を変えたり,もしくは,IPMという概念から,その他方法で対応するということがなされたり,もしくは,品種の改良をして,虫に対する抵抗性の高い品種を作ったりされます.

とにかく,薬剤を使うのは,かなり難しいということを一つ理解することが大事です.
人間も,病気になったりすると,薬を使う場合が,あると思いますが,難しいですよね.
判断が難しすぎるので,そのため医者という職業があり,処方してくれるわけです.

僕は,農薬の使用も,本質的には一緒だと思っていて,とても難しいものだと思っております.
なので,薬剤防除については,きちんとした理論が必要で,その上で的確な使用をするべきだと思います.

虫はなぜ発生するのか?

私たちの日本は,温暖気候で,多雨なので,やはり病害虫の発生は,とても頻繁に起こりうるものです.
野菜や果樹もよく育つが,病害虫も多いのです.ただ,発生する要因というのは,ある程度明らかになっております.
病害虫の発生には,3つの要因があると言われます.

1つ目が,まず病原菌や虫が存在するということです.
物理的に,フィジカルに,存在をしてるということです.
なので,国や場所によって,被害は異なります.

2つ目は,それら病害虫が増殖するための環境が整っているということです.

3つ目は,植物体が,病害虫の被害を受けやすい状態にあるということです.

この3つを理解して,そして,農薬を使う前に,どうアプローチしていくのかを考えることが重要です.
この3つが重なったときに,病害虫の発生が生じるわけです.
例えば,健康上弱ってる株(3番目)に,物理的に病原菌を沢山つけても(一番目),その周囲の状態が,例えば水分がなく,病原菌の胞子発芽ができなければ増えないわけです.菌が増える環境が整ってなければ,大丈夫なわけです.
また,病原菌が物理的にいて,これらの増殖の環境が整っていても,抵抗性品種であれば,株は被害を受けにくいわけです.

すなわち,病原菌が発生する3つの要因のうち,どれか一つを無くすか,それぞれを理解し,徐々に小さくしていくということが必要です.
農薬使用というのは,3つの要因のうち,主に1つ目の要因の除去なのです.物理的に,存在を消すという方法です.つまり駆除ですね.
病害虫の防除という言葉の「防除」というのは,「予防の防」と「駆除の除」です.
冒頭でも説明したように,薬剤の使用は難しい,駆除は難しいのです.
そして,そこに継続的な利点があるか,を考えると,どうやら,要因のうち,2つ目や3つ目をなくしていった方が,お得だなと思いませんか.
実は,予防の方が簡単です.
人間も,ウォーキングや,睡眠や,食事は,誰でもできますが,病気になったときに薬を選ぶって,難しいのですよね.
それと同じです.

栽培に関しては,例えば,雨を防ぐだけでも,大体の病気は防げますし,植栽の距離を考え直すことも重要でしょう.
道具の使用に関しても,繁殖を抑えられるかもしれません.
他にも,生物的防除や,コンパニオンプランツ,品種の選定,有用微生物の活用,窒素過多を抑える,ネットなどで物理的な侵入経路の遮断など,植物残渣は放置してないのか,とか,雨の日,不必要に歩き回ってないか,とか,色々なことがあるわけです.
ぜひ,薬剤の使用しかないと考えている方には,この辺の検討もしていただけるといいのかなと思います.
継続的に,野菜や果樹を作っていくためにも,ちょっとずつ見直していけたら良いのかなと思います.