アザミウマについて知る!農薬が効かない理由!農薬以外の防除方法の紹介!
この記事のポイント
  • かなり厄介な虫「アザミウマ」の生態を知る!
  • 農薬抵抗性を獲得して,薬剤の効果が薄れてきた!
  • IPMという考え方!農薬だけに頼らない防除方法!

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

アザミウマという,とても厄介な害虫がおりますよね.
僕らは果樹をしているのですが,よくマンゴーの若い葉っぱなどにチャノキイロアザミウマを見かけますね.
英語でいうとスリップスですね.

けんゆー

アザミウマの名前の由来が面白い!


アザミウマは和名ですけれども,かつて子供達が虫をとって遊んでいたことから名前がついたようです.
「ウマデー」と言いながら,アザミの花を掌で叩き,アザミウマを捕獲して,虫の数を競っていたようですね.
かつては,虫のことをウマやウシと呼ぶ風習や,それにまつわる方言があり,アザミから出てくる虫で,アザミウマとなったようですね.

けんゆー

アザミの花だよ!キク科アザミ属に類する植物を総称してアザミというよ!ごぼうの花みたいだね!

また,アザミウマの姿が本当にウマ面のような外見をしているという説もあります.

今日は,そんなアザミウマのお話をしたいと思います.

アザミウマの種類や特徴,生理生態,そして防除,気をつけるべきことなど,お話ししていきたいと思います.
ここ10年でアザミウマ被害が猛烈に加速していると言われておりますが,ぜひ,この機会に,彼らのことを知って,栽培のご参考になれば幸いです.

早速,アザミウマの特徴を見ていきましょう.

アザミウマの特徴

現在,国内におけるアザミウマの種類は150種類ほどいると言われております.
そして,その中で農作物の被害が観測されている数は,44種類であると言われております.

けんゆー

かなり多いんだね!

そして現在かなり厄介な種類が以下の5つです.

  • チャノキイロアザミウマ (Scirtothrips dorsalis Hood )
  • ミナミキイロアザミウマ (Thrips palmi Karny)
  • ミカンキイロアザミウマ (Frankliniella occidentalis(Pergande))
  • ネギアザミウマ (Thrips tabaci Lindeman)
  • ヒラズハナアザミウマ (Frankliniella intonsa)

サイズや色はどのくらい!?

非常に小さな昆虫で,1mm程度のことが多いですが,大きいものでは2mmですね.
とても小さなホクロのようなサイズでしょうか,ご自身の腕などの小さなホクロを探してみてください.
よくよく目を凝らすと見える,という昆虫です.

体の色は,主に黄色,黒,茶褐色,などです.

食害の多い場所は!?

花粉を食べるものもおりますが,主に葉っぱに尖った口吻(こうふん)を突き刺し,を吸います.
葉っぱの成長点付近,柔らかいところが好きなようで,葉っぱが曲がったり,クシャクシャしたりしますね.

また狭いところが好きなようで,ナスなどは,ヘタの下からやられてきます.
そして,風にのって飛びます.

寒さには強い!?

寒さに強いです.
冬は身体の色が若干茶色く変化しますが,これは太陽光を浴びて熱を上手く作っていると言われております.
頭が良いですね.僕も冬にこそ日焼けをしたいものです.
ハウス栽培などでは,年中見かけます.
暖かいと繁殖スピードが早いですが,33度以上では,逆に繁殖スピードが落ちてきます.

かなり厄介な種類の,ミナミキイロアザミウマやチャノキイロアザミウマなどは,交尾をしなくても卵を産みます.
ただし,雄しか生まれません,交尾をすると雌が生まれます.
他の種類でも,雌だけで増えていく種類がいます.

けんゆー

ネギアザミウマは,もともとメスのみで増えていたけど,近年はオスのみで増えるタイプも見つかっているね!オスタイプの方は,農薬抵抗性が強いとか!

世代サイクルも早く,卵から成虫までは2週間,葉っぱの細胞内に卵を200個程度産み付けます.
短期間で,爆発的に増えます.

ウイルスを媒介する!そして草にも注意!

また,アザミウマというのは,厄介なことにウイルスを媒介します.
トマト黄化えそウイルス( TSWV)や,スイカ灰白色斑紋(はんもん)ウイルス(WSMoV)と呼ばれているウイルスを運んできて,トマト,ピーマン,ナス,レタス,スイカ,ゴーヤー,キュウリ,トウガンなど,あらゆる作物に被害をきたしますね.
このウイルスは一部で,その他にも多くあります.
ウイルスに感染してしまったものは,取り除くしかありませんが,実は周囲の草にも,毒が広がっているケースもあるので注意が必要なのですよね.

草生栽培や自然栽培をしている方は,草を生やしながら野菜の生育を行なっている方が多いと思いますが,ウイルスが媒介すると注意です.
特に,この時期だと,例えば,カタバミやホトケノザ,ハコベなどですね.

一般的に,草生栽培では,土を乾燥から守り,保湿してくれたり,他の雑草を抑えてくれたりと,刈らずに置いとくかたが多いと思いますが,ウイルスを持っている可能性があるので,これらは警戒すべき雑草という見方もできます.状況を把握することが大事なのですね.

農薬による抵抗性がある!?

世代の更新が早いので,農薬などによる抵抗性の獲得が早いという特徴があります.
従来は効果があった農薬が効かなくなってきた,という事実もあります.
ざっと論文を探すと,アザミウマの農薬に対する抵抗性について論じた論文が出てきますね.
大阪府内におけるアザミウマ類の薬剤殺虫効果の現状と新たな防除体系」という論文,日本農薬学会から出ている学術論文ですが,非常に分かりやすかったですね.
アザミウマの種類にもよりますけれども,ピレスロイド系およびネオニコチノイド系など,その他いくつかの農薬の殺虫効果の低下が示唆されておりました.
ここらへんは,個別に論文を取り上げて解説しても良いかもしれないですね.

農薬というものは,薬という名前がついておりますが,一般的理解は「毒」なのですよね.
薬と毒は表裏一体であることを上手く表している気がします.

この農薬は虫を防除するためのツールとして,非常に便利なものなのですが,虫を殺すのもまた進化の手助けですからね.
生き物というのは,生きるために死にますから,世代サイクルの更新が早いと,やっぱり農薬抵抗を持つのですよね.
生と死も表裏一体なのですね.

農薬だけでは限界があるので,近年では農薬に頼らない防除,つまり,赤色防虫ネットやタイベックマルチ,天敵昆虫などの導入などが推進されていたりします.

農薬に頼らない防除方法について!

近年,薬剤抵抗性を発達させた種も存在しており,農薬のみに頼らない方法で防除することが望まれます.
IPM(Integrated Pest Management)という考え方ですね.これは総合的病害虫管理といい,化学的防除法(薬剤)だけに頼らず,耕種的防除法(品種や栽培方法を変える),生物的防除法(天敵昆虫),物理的防除法(資材や熱や光を利用)をうまく組み合わせて,病害虫の防除をしようという考え方です.
今回は,かなりたくさんのことを紹介しますが,アザミウマに困っている方で,もし参考になれば,深く調査するきっかけになればと思います.

現在,積極的になされている防除方法として,以下があります.

  • 天敵昆虫:スワルスキーカブリダニなど
  • 昆虫病原性糸状菌:メタリジウム・アニソプリエ粒剤(メタリジウム剤)
  • 赤色防虫ネット
  • 光乱反射シートや白マルチ(タイベックマルチ)
  • 赤色LED
  • ハウス・圃場周りの黄色い花を刈る!

天敵昆虫

天敵昆虫には以下のようなものが有名です.

  • スワルスキーカブリダニ
  • ククリメスカブリダニ
  • タイリクヒメハナカメムシ

スワルスキーカブリダニは,アザミウマ類の幼虫を捕食してくれる天敵生物です.
他にも,コナジラミ類やチャノホコリダニなども捕食します.

ククリメスカブリダニは,ミカンキイロアザミウマ,ミナミキイロアザミウマの発生初期に効果があると言われております.

タイリクヒメハナカメムシは,11度以上で発育が可能だと言われていますが,高温の方がより良いようです.
春先から秋にかけてが理想ですが,眠りが浅く,冬季の短日条件下でも有効に働くことが可能であるとされてます.

他にも,肉食の昆虫は効果的だと言われております.
クモ類や,クロヒョウタンカスミカメアカメガシワクダアザミウマ(肉食のアザミウマ)ヒメカメノコテントウ(黄色いてんとう虫)などといった昆虫も効果的であると言われています.
このような昆虫は,土着昆虫である場合が多く,その土地に生息しているもの,生態系を大事にしているところでは,そういった昆虫が集まりやすいと言いますね.
ソルゴーを,バンカープランツとして活用している方もいるようで,ソルゴーに湧いたアブラムシを食べにヒメカメノコテントウが湧きます.
これを活用して,アザミウマを食べてもらう,という感じですね.

メタリジウム剤(メタリジウム・アニソプリエ粒剤

メタリジウム剤というのは,病原性の糸状菌です.
一般的には,株元に散布しておきます.
アザミウマは蛹になる際に,地面に降りる行動をしますが,その際に,感染し死亡させます.

赤色防虫ネット

赤色の防虫ネットはアザミウマの侵入を抑制する効果が高いと言われています.
また,赤いネットの中に,銀色の糸が入っているものが忌避効果が高いと言われています.
以前,お友達のスイカ農家さんが,苗床や苗を管理しているところを赤いネットで覆っていて,理由を尋ねたらやっぱりアザミウマの防除をしているとのことでした.

光乱反射シートや白マルチ(タイベックマルチ)

果樹の株元に貼られることが多いです.
アザミウマが植物体に飛来するのを防ぐ効果があります.

下方向からの太陽光が差すと,アザミウマは飛べなくなると言われています.
アザミウマは,太陽光を背中で受けて飛んでいるため,お腹に光が差すと,上下が分からなくなります.

また,紫外線カットフィルムも効果的だと言われております.
アザミウマは紫外線をもとに飛んでいるので,効果的なんでしょううね.

また,白マルチは地温の上昇を抑制するので,夏の暑さを凌ぐ効果はありますが,冬の利用は野菜との兼ね合いを考えてくださいね!

赤色LED

赤色のLEDを照射すると,ミナミキイロアザミウマ・ミカンキイロアザミウマが着きにくくなるようです.しかし,照射前についてしまったものを取り除く効果はないようです.照射前のアザミウマの密度を0にしておく必要があると言われています.

ハウス・圃場周りの黄色い花を刈る!

アザミウマは,花粉を好み食べますが,時に,黄色い花によく付くようです.
粘着板トラップなどが黄色いのも,そういった理由ですね.
春先の菜の花や,秋のキク科の雑草などは注意が必要です.

ハウス周りのそういった花から飛んでくることも,珍しくないので,そこら辺の整備も行うと良いです.
また,圃場が点在しているときは,圃場間の移動をなるべく少なくすることも効果的だと言います.
人間の衣服や,靴などについて,運んでしまうのですね.
ハウスとハウスを行き来する時には,ブロワーを使用して衣類についたアザミウマを吹き飛ばしたり,午前中と午後で作業場所を分けるのも効果的だと思われます.

けんゆー

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