- 化学農薬に頼らず,代替的にいろんな対策をして,その効果を知る!
- 人の健康や環境への負荷,保全,消費者に支持される食料の供給!
- 害虫は,薬物抵抗性を獲得しやすいと言うことを知る!
ハイサーイ!
こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
今回は,害虫を防除するためのIPMという考え方をお話しします.
IPMというのは,Integrated Pest Managementの略で,総合的病害虫管理と言います.
IPMの本来の意味を認識しよう!という会です.
定義は,作物や,防除対象生物などによって,その状況をきちんと把握し,最適な防除対策を行なって,その効果をきちんと知ろうというものです.
勘違いしやすいところですが,IPMは,化学農薬に頼らず,代替的にいろんな対策を講じるというのは,一つの手段であり,本来の目的は,その効果を知ることなのです.
つまり,防虫ネットを使用するということがIPMではないです.防虫ネットをした結果,虫の防除の効果は,農薬に比べてどのくらい良くなったのか?こういうことが本来の目的です.
対象や状況,環境に応じて最適な手段をとり,その効果を理解しようね!ということなのです.
つまり,IPMは,化学農薬の使用は大丈夫です.
たまに,うちは虫の防除をIPM的にやっているから化学農薬は使用していないんだ!ということを色んなところで耳にしますが,ちょっと,ん?となります.
さらに,農林水産省の定義では,病害虫の管理という文脈には,人の健康や環境への負荷,保全が含まれており,更には,消費者に支持される食料の供給を実現することを求めております.
難しいね!
これは,化学農薬だけではなく,様々な観点から病害虫の管理をしていこうよ!というものです.
農薬には,効果の高いもの,効果の低いもの,効果は高いけど,使い続けると徐々に効かなくなるものを把握して,最適な防除をしようね!という概念がIPMなんですね.
農薬以外にも,手間がかかって大変なもの.継続性がないものも,きちんと確認していこうね!というのがIPMです.
元々は外国で始まった考え方なので,英語で記載されてます!
つまり,作物・害虫・状況・環境に応じた最も効果的な方法を模索し,その効果を知ること!なんですね.
色々な対策方法
このIPMという考え方は,最適な効果的な防除対策を模索するということが狙いですが,病害虫の対策には以下のものがあります.
- 化学的防除:主に化成の農薬を使用する.
- 耕種的防除:圃場環境,栽培品種,栽培方法(輪作,混作など)を見直す.
- 物理的防除:マルチ,ネット,散水,雨除け,太陽熱などを利用.
- 生物的防除:天敵昆虫・微生物,性フェロモンなどを利用.
などがあります.
最も簡単なのは,殺虫剤や農薬を利用する方法ですが,それ以外にも効果が高いものはあるのか,そしてそれはどれほどの効果を示すのか,そういったものを知るのがIPMです.
化学農薬の是非.
これまで手頃で活用できて,比較的効果の高い化学農薬の利用が,このIPMの考え方のもと見直されてきています.農林水産省では,虫の防除に対する栽培者および消費者の安全性,そして環境の保全ということも考慮すべきという観点から,化学農薬だけが最適なことではないよねというものです.
しかしながら,その他の方法は,効果が出にくかったり,農薬以上のお金や手間がかかったりするので大変な部分もあります.農業を継続するためには,お金や自身の時間も大切なことですから,考えなければいけないです.
なので,このIPMという考え方に好意的であればあるほど,作物の特徴,虫や菌の習性や特性を知る必要があると考えます.
頑張っていきましょう...
農薬が効かなくなってる虫
結局,化学農薬が一番手っ取り早いよね!?というのは,時期尚早です.
もっと虫たちの適応能力は侮れません.
人間が使用する薬が,虫をさらに強くしてしまうということもあり得るのです.
人間もカフェインを取りすぎたら効き目が薄まるというようなことが,害虫にも起きるのですよね.つまり,従来は効き目があった農薬が,徐々に効かなくなるというものですね.
特に虫は,世代の更新が早く,増殖力も高いということから,薬剤抵抗性の獲得が早いのですよね.
現に,色んな害虫が,薬物抵抗性を獲得したとして,報告されております.
例えば,ハダニです.
日本では,ミカンハダニやカンザワハダニが顕著です.
また,1990年代以降,ナミハダニの薬物抵抗性の発達が世界的に問題になってます.イチゴなどを栽培されてる方は深刻ですね.
(参考文献:「ハダニの薬物抵抗性,日本農薬学会,京都大学大学院,2009」)
他にも,アザミウマですね.
ミナミキイロアザミウマ,有機リン系剤などの殺虫効果が低いこと.
ネギアザミウマのピレスロイド系の殺虫効果が低い個体群が多いこと.
チャノキイロアザミウマでネオニコチノイド系の殺虫効果が低いことを報告した論文があります.
(参考文献:「大阪府内におけるアザミウマ類の薬剤防除効果の現状と新たな防除体系,2019.」)
また,コナジラミも現在20種類以上のバイオタイプが確認されておりますが,その中でもバイオタイプBとQが世界的に重要な害虫になっています.
日本では,2005年に海外からバイオタイプQが入ってきており,これが殺虫剤に対して抵抗性が発達しており,問題視されております.
(参考文献:「アブラムシとコナジラミ媒介性ウイルス病の防除をめぐる諸問題.2017」,こちらの論文はコナジラミというよりも,害虫に対する姿勢全般が楽しかったです.)
こういったことも,化学農薬を使った場合のツケとしてあるということも深く考えるべき問題です.
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