農林水産省:「食料自給率」という奇妙な数字.食料自給率は絶対に上がらない. 
タイトルが入ります。
  • 食料自給率という数字の本質について解説!
  • カロリーベースで計算していては,農家さんがどんだけ頑張っても無理.
  • 牛に上げる餌が外国産であれば国産の和牛にカウントしない.

けんゆー

しっちゃかめっちゃかな奇妙なワード「食料自給率」!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

本日は,日本の農林水産省が声を大にしてかかげる「食料自給率」という奇妙な言葉の意味を正確に理解したいなと思います.
実は,東北農政局(農林水産省の管轄)のページに,食料自給率が低いので,生産者は食糧生産の努力をしようね!と書かれているのですが,これ実は,ほとんど100%に近い確率で,上がらないのですね.

令和2年3月に「食料・農業・農村基本計画」という方針をまとめました.
基本的な方針はざっくりいうと二つです.

1.食料自給率の向上 37%(2018)→45%(2030).
2.食料安全保障の確立.

となっております.
実際のところ,原文は以下となっています.

「産業政策」と「地域政策」を車の両輪として 推進し、将来にわたって国民生活に不可欠な 食料を安定的に供給し、食料自給率の向上と 食料安全保障を確立.

今回は,この政府の掲げる基本方針の食料自給率について考えていきたいと思います.

食料自給率のお話

基本方針というのは,総じて,問題解決に向けて一致団結しようというものです.
つまり,現状,日本には問題がなく,現状維持でいこうね!という場合は,食料自給率の向上,などとは書きませんね.
どうやら,この食料自給率の低さを問題にしたいのが農林水産省なのですね.

また,日本人も,食や農業の問題というと,食料自給率の低さが真っ先に頭に浮かぶ人が多いと思います.

現在,農林水産省が出している食料自給率は2018年現在で,37%という数字なのです.
つまり,残りの 63%の食品は,海外に頼っているという状況だよ,ということを言っております.

しかし,この数字,実はカロリーベースなのです.
これまで,37%と聞いて,日本が海外に頼りっきり不安があるとか,食料を輸入できなくなったら危ないのではないか,とか思っている方がもしかしたら居られると思いますが,実は,全く違った意味が見えてくるのですね.データというものは面白いです.

政府やメディアは総じて国民を煽るのが好きですから,やっぱり本質を見ていかないといけないのですね.

スーパーに行ったら63%の食料は外国産なのか!?

では,スーパーに行った際に,野菜や果物の棚を思い返してください.
何%が国産でしょうか.
実は,ブロッコリーも玉ねぎも,キャベツも,人参も,ほとんどが国産,アボカドはメキシコ産ですが,大体の野菜が国産であることに気がつきます.
お米も牛乳も国産です.ただ,お肉はオーストラリア産やアメリカ産が並ぶにしても,やっぱり食品のうち,国産は37%しかないでしょうか.
実は,違いますよね.

これがカロリーベースの罠なのですね.
実は,この食料自給率の計算は,全てカロリーに換算されております.
農水省が出した「食料・農業・農村基本計画」には,確かに,生産額ベースの食料自給率も乗っています.これは現在66%ですね.
しかし,一番初めに書かれている数字は37%のカロリーベースのことなのですね.

しかも,このような換算をしている国は,世界でも日本独自のやり方なのです.
日本を救う未来の農業」という竹下正哲さんが書かれたが書かれた本には,スイス,ノルウェー,韓国,台湾もこのカロリー計算の食料自給率の算出はしているのですが,日本のやり方とは若干異なるし,そもそも,この数字に固執していないとおっしゃられております.

そして,このやり方で行くと,食料自給率は絶対に37%から上がることはないです.
なぜかというと,野菜や果物をどんだけ頑張って生産しても,食料がすべてカロリーに置き換わるので,全然上がらないのですね.
東北の農政局には,こう書かれていました.

 

自給率を上げるためにはどうしたらよいでしょう。

自分たちの食料は、自分の国で作るように努力することが大切です。

日本では、平成37年度(2025年度)までに、食料自給率(カロリーベース)を45%に上げることを目標としています。

自給率を上げるために、生産者は、消費者の好みに合わせて食料を生産し、消費者は、国内でとれるお米などの農作物をしっかり食べて、食べ残しを減らす努力をすることが必要です。

ちょっと酷い話ですね.農家さんが頑張って頑張ってたくさんの野菜を作っても,カロリーは上がらないので,食料自給率は上がらない計算になります.
100gあたりのキャベツは23kcalに対して,小麦粉なんて368kcal,牛肉は298kcalですからね.
国産野菜を増やしても全く,食料自給率は上がらないのですね.

日本は,カロリーの高い油,小麦,砂糖の7〜9割を輸入してますからね.
当然,食料自給率はぐんと下がるわけです.

さらに,牛肉,実は,国産和牛は日本産にカウントされていないのですよね.
カロリーベースの自給率では,外国産扱いで計算されるのです.

これはなぜかというと,和牛が食べている餌が,外国産(ほとんどはアメリカ産)という理由からきております.
日本で作っている和牛なのにも関わらず,そういう区分で計算されている事実があります.

実は,驚くべきことに,外国産の餌を使用している理由で,牛乳,卵もそうなのです.
(牛乳は74%,卵は88%が外国産になっています.)
外国産の牛乳や外国産の卵なんて,僕の記憶では食べたことがないのですが,食料自給率という数字に落とし込むときに,農林水産省はそうやって計算しております.
ちなみに,餌にまでさかのぼって,食料自給率を無理やり計算している国は,世界でも日本だけです.

ちなみに,「日本を救う未来の農業」の竹下さんが算出した結果だと,現在の耕作放棄地をフル活用して,そして農業生産をかなり突き詰めたとしても,絶対にこの計算では50%には届かないということを示唆していました.僕もそうだと思います.

では,なぜ政府が食料自給率にそこまで拘るのか,という話は次回に回したいと思います.