この記事は,2022年3月25日に,オンラインサロンに投稿された記事の無料公開です.
おはようございます.
今回の記事は初の無料公開にしたいと思います.
サロンメンバさん以外の方に,このような記事を書いてるよ!という広告として活用したいと思います.3月も終わり春が来るので,新規キャンペーンです!!新規者さんお手柔らかによろしくお願いします.
さて,
いきなりですが,本日はアボカドの種間交雑の話を深いところまでやりたいと思います.なので前提知識として,アボカドの学名「Persea americana」だけでもしっかりと覚えておいてほしいな!と思います.なぜなら,本日は属などの話がかなり出てくるので,アボカドの学名を覚えておいた方が頭に入ってきやすいのです.
なので,ペルシーアメリカーナ(Persea americana)と10回唱えましょう.
ペルシーアメリカーナ,ペルシーアメリカーナ,ペルシーアメリカーナ,・・・・,ペルシーアメリカーナ,・・・・
本当は10回ではなく,100回にしたいところですが,音読で使うはずだった残りの90回分の体力で,第一章を読んでくださいませ.
第二章,第三章,第一章の慣性で読んでいただけると嬉しいです.
最後の第五章は「今週の野犬に吠えられた話」改め「運の良さ」を考察します.
社会を生きてたら,面白くないことや壁にぶつかる時もあります.
腹痛が起きてしまった方への処方箋を書きました.
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<目次>
1.アボカドの未解決問題について
1−1.Persea属とは!?
1−2.Eriodaphne亜属について.
1−3.Persea亜属の整理.
1−4.実は,超アボカドに似てる果実もある!
2.検討①,Persea schiedeanaとの関係.
2−1.Persea schiedeanaの実生苗は,根腐れにとても強いが...!?
2−2.Martin Grande(G755)とは!?
3.検討②:P. floccosa との交雑について!?
3−1.交雑種F1の獲得.味は...!?
4.実生には未来があるが...大事なことがある!
5.おまけ:「運が良い」とはどういうことか考えた.毎日を楽しむ思考法.
5−1.運が良いとは,あらゆる出来事を「都合よく解釈」することである.
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<アボカドパーティへようこそ!>
アボカド栽培や熱帯果樹栽培の好きな人たちの集まるオンラインスペース「アボカドパーティ」へお越しください.最近「新・アボカドパーティ」へと変わりました.
今回の記事は無料公開記事なので,リンクは伏せてますが,サロンメンバーさんはこちらの記事のリンクからご入会ください.
(【No.107】アボカドの生存戦略?なぜ成長が早い?花や葉の巧みな調整とは?人間の「好きなことで生きていく」とは?)
<過去のアボカドパーティZoom会議議事録 サロン内限定公開>
今回の記事は無料公開記事なので,リンクは伏せてますが,以下の記事に「限定動画」のリンクを貼っております.
(【No.107】)
では,今週もよろしくお願いいたします.
1.アボカドの未解決問題について
アボカド栽培をする上で無視できないのは「フィトフトラ根腐れ」だと言われます.これは無視できない問題で,とにかく排水不良の場所だと生育が悪く枯れてしまうというケースが多発します.
病原体はフィトフトラ菌(Phytophthora cinamomi)という厄介なもので,排水性の悪いところだと,これに感染して枯れるわけです.
そのため,アボカド栽培においてはそもそも傾斜地などのような排水性の良い場所に植えようね!というのが常識的に言われているのですが,実は多くの研究で,フィトフトラ根腐れに対する抵抗性台木の作成が試みられてきました.
結論から言うと,未だ完全に成功したケースは報告されておらず,未解決問題の一つになっております.
今日は,そんな未解決問題に挑んだ多くの研究より「種属間交雑(Interspecific crosses)」の話を取り上げたいと思います.
1−1.Persea属とは!?
アボカドの学名は「Persea americana」でしたね.
(10回唱えたら大丈夫!)
学名は前半に属名のPersea,後半に種小名の「americana」が入るわけですすが,このPersea属,実はかなり多くの種類があります.
(Persea americana のPerseaはよく省略されてP. americanaなどと書かれることが多いです.)
こちらの図は,Persea属の形態学的特徴に基づく分類を示したものです.
2007年に書かれた文献からの引用になります.
(引用文献:Persea (avocados) Phylogenetic Analysis Based on Morphological Characters:Hypothesis of Species Relationships)
実はPerseaは,Persea亜属とEriodaphne亜属の2つに分かれており,アボカドはPersea亜属に分類されます.
1−2.Eriodaphne亜属について.
Eriodaphne亜属の方は,aguacatillosというアボカドに似たような小さい果実をつけます.
(画像はこちらのページ「https://www.elmundoforestal.com/portfolio/aguacatillo/」から引用してます.)
亜属のEriodaphneは,種数が多く,変異しやすく,小さな果実をつけるのが特徴です.アボカドのような木ですが,分類的には明確に区別されてます.
実は,このEriodaphne亜属は,フィトフトラ根腐れに対する抵抗性があり,根腐れによって引き起こされるアボカドの病気にかからないと言われてます.しかし,アボカドとは互換性がなく,交わることができないのです.
Eriodaphne亜属は以下ですが,これらは,互換性がないことが論文中で紹介されてます.
Persea borbonia Spreng.,
P. cinerascens S.F.Blake,
P. donnell-smithii Mez,
P. excelsa (Blume) Kosterm.,
P. indica Spreng.,
P. lingue Nees,
P. palustris Sarg.,
P. rigens C.K.Allen,
P. silvatica van der Werff,
P. skutchii C.K.Allen,
P. standleyi C.K.Allen.
Eriodaphne亜属と交雑ができたり,もしくは台木などで活用ができたら問題は解決するのですが,どうやらそうはいかないようですね.
ただ,もしかすると,まだ人間が交雑可能なEriodaphne亜属を見つけていないだけで,交雑が行える種が存在するかもしれませんが,この辺は不明です.
1−3.Persea亜属の整理.
一方で,Persea亜属も面白いことがわかっています.
(というか,ついてきてるかな,大丈夫かな...笑)
さらにP. steyermarkii やP. nubigena はグアテマラ系アボカド(P. americana var. guatemalensis)とかなり近しい関係にあり,P. nubigenaは,親和性があるということが報告されてます.おそらく接ぎ木などは成功率が高いのかなとも思われます.
あっ,P. americana var. guatemalensis の var.というのは,変種(variety)という意味で,基本種の中から異なる特徴をもつものを表します.アボカドの中のグアテマラ系ということです.
注意)アボカドにはメキシコ系,グアテマラ系,西インド諸島系の3系統の変種があります.
(画像引用:国産アボカド栽培者が,アボカドの系統や品種について徹底的に解説します!)
ちなみに,文献中では,グアテマラ系アボカド(P. americana var. guatemalensis)の祖先は,
P. nubigena,
P. steyermarkii,
P. tolimanensis,
P. zentmyerii.
と言われております.
また,メキシコ系アボカド(P. americana var. drymifolia)の祖先はPersea floccosaと言われております.
さらに本文献で紹介があったのですが,西インド諸島系アボカド(P. americana var. american)は,メキシコ系アボカドとP. schiedeanaの交雑種だと言われております.つまり,Persea schiedeanaは,西インド諸島系の祖先だと言われているわけです.
(注意,ただし諸説あります.)
大丈夫でしょうか.ついて来れておりますでしょうか!
もし,ついて来れてなければ,アボカドパーティなどでご質問してください.
(Persea (avocados) Phylogenetic Analysis Based on Morphological Characters:Hypothesis of Species Relationships からの内容を参考にしております.)
1−4.実は,超アボカドに似てる果実もある!
ちなみに,上の分岐図のBeilschmiedia属も,アボカド(P. americana)と類似しており,果実や形態がかなりそっくりだと言われてます.特に密接な属だと記載がありました.学名「Beilschmiedia anay」でググると,本当にアボカドのような果実があるのですね.中央アメリカ,グアテマラ,メキシコにはあるようです.どなたか栽培してるのでしょうか.
こちらもアボカドのように食用になるようですね.
接ぎ木ができるのかは探しきれませんでしたが,おそらく厳しいのだと思われます.基本的に接ぎ木は異属間では難しいとそれております.
というか,アボカドのような果実が他にあったという事実に驚きです.
さらにちなみにですが,
クスノキ科のLitsea属にタンカラック(Litsea glutinosa)と呼ばれる果実もあります.果実はアボカドとはあまり似てませんが,クスノキ科で食用になる果樹として知られていたりします.
少し,話が乱雑になってきたので,第二章でPersea属の,Persea schiedeanaとアボカド(P. americana)話をしたいと思います.
2.検討①,Persea schiedeanaとの関係.
実は,Persea属の中に,種小名の違うPersea schiedeanaという果樹があるのですが,これが興味深いのです.アボカドの近縁種にあたります.
こちらは,「論文:Persea schiedeana and Martin Grande the Period from 1920 to 1975」 から画像を引用してます.
現地のメキシコでは,chininiと呼ばれていたり,グアテマラでは,coyoと呼ばれていたりします.またアメリカには,1920年には導入されていて,P. americama(アボカド)とかなり似てるようですが,違うようですね.
当時から,アボカドの急な根腐れが問題で,ちょうどその頃,その原因がフィトフトラ菌であるが発見されます.時期もちょうど1940年で,植物病理学者のVincent Wager氏が報告しました.その時から,学者さんたちは,この問題を解決しようと,アボカド近縁種を導入して,どうにか抵抗性のある品種を作ろうと試みるわけです.そこで上がってきたのがこのPersea schiedeanaというわけです.
2−1.Persea schiedeanaの実生苗は,根腐れにとても強いが...!?
当時,P. schiedeanaの苗木の調査をすると,根腐れ抵抗性があり,とても強い苗であることが認められております.アボカド(P. americana)では枯れるような水はけの悪い粘土の土でも被害を受けず,また耐霜性もあり,とても強い木であることが言われてます.
ただ,その後1950年代以降と接木の研究が盛んになり,P. americanaの接ぎ木はできるのだが,その後の生育がとても悪くなることがわかりました.
ただ「Martin Grande(G755)」と呼ばれるP. schiedeanaとグアテマラ系のアボカドの交雑で生まれた種が,実はとても台木に使えるのではないか!ということが言われております.
2−2.Martin Grande(G755)とは!?
画像は,「論文:Persea schiedeana and Martin Grande the Period from 1920 to 1975」 から再度引用しております.
結論から言うと,2013年に出版されたThe Avocado Botany, production and usesという書籍には,1990年の文献を引用して「Martin Grande」は,フィトフトラ耐性がかなりあり,有望なものだが,ただ,いくつかの栽培地域においては,木の樹勢そのものが劣ると言われております.全ての場所でフルに能力が発揮できないのですね.
画像を引用してる文献は1988年に出版されておりましたが,当時は,まだテスト段階で,その時には,優れた台木特性を発揮しており,フィトフトラだけではなく,耐塩性なども高いとされておりましたが,この辺の多くの国での追調査が求められるのでしょうね.
3.検討②:P. floccosa との交雑について!?
Persea floccosa というアボカドの近縁種は,メキシコに野生してますが,これまで,このP. floccosa という種とも交雑が調査されており,いくつかの検証結果が得られてるので共有します.
P. floccosa は,他の近縁種よりも多くの果実を付けるという豊産性の特徴を持ちますが,しかし,果実サイズは小さく,また種子は比較的大きいです.見えにくいのですが,上の画像をご覧いただけたら幸いです.
3−1.交雑種F1の獲得.味は...!?
とても古い文献(1954年)ですが,グアテマラ系アボカドと,P. floccosaの交雑が可能であることも示唆されており,実際にいくつか成功してるようですね.この頃は,交雑ができるかどうかに注力しており,根腐れ耐性の評価はまだされておりません.
(Interspecific Hybridization in and Chromosome Numbers in Persea.)
その後,The avocadoでもF1の紹介がなされておりました.いくつか大きな果実や種子の小さいものの栽培品種との交雑を得てますが,フレーバなどの果実品質がいまいちという結果になっております.ただ,この辺りの台木の調査などは,まだしっかりと行われていない印象があります.
(引き続き論文などの調査をして,最新の情報をお届けできるように頑張ります.)
4.実生には未来があるが...大事なことがある!
以前「【No.100】遺伝的多様性の理解,日本人からヨーロッパ人は生まれない」の方でも詳しくお話しさせていただきましたが,実生繁殖には,未来があります.
(実生とは,種から増やした苗です.)
やはり,新しい品種特性を獲得する上では,実生での誕生が欠かせません.
ただし,遺伝学の観点から,やはり偶発実生に優秀な品種の誕生を期待するのは,確率的には限りなく小さいです.実生の苗を個人が作り続けて,一生の時間を使ったとしても,優秀な品種の獲得には至れない方が多いと思います.
そのため,やはり,原産地のもともと耐性のある野生種や原種を探し,交雑できるならそうした方が確実なわけです.むしろ,ある特定の性質を付与する場合は,その方法が至極一般的になされてます.例えば,病原性を獲得するための園芸種の品種改良なども,ほとんどはこのようにしておこなれます.トマトなどもそうでしたね.
以下は,【No.70】アボカド炭疽病を誘発する菌は500種類以上もいて,同定した人もすごいなと思う今日この頃.からの引用です.
■タバコモザイクウイルス(TMV)には,S.arcanumが抵抗性を示す遺伝子を持っており,現在のトマトの大部分に活用されてる.
■トマト黄化葉巻病(TYLCV)は,S.arcanumとS.chilenseの第6染色体に抵抗性が確認されており,これから抵抗性を獲得した品種が出てくるであろうとされる.
■トマトかいよう病の原因であるClavibacter michiganensisについても,部分的な抵抗性を示す遺伝子が,S.arcanumに見出されているが,細菌の増殖がまだ完全に抑えられていない.
■糸状菌による病原菌は,病原体側の適応によって抵抗性が打破される場合が多く,新たな抵抗性遺伝子が必要になる場合が多い.トマト葉カビ病は少なくとも4個の抵抗性遺伝子が使われたが,現在は抵抗性が使えなくなってる.
■トマト半身萎凋病(Verticilliumレース)は,品種改良によって発病抑制が可能になった.ただ,Fusariumによる土壌伝染性糸状菌も現在のところは抑え込みに成功しており,数年は効果を維持できるとされてる.
実生には未来があるが,こういった交雑の知識を入れることが大事なのかなと思われるわけです.
ということで,今回の交雑の話はここまで!お疲れ様でした....
また続きは今度.
5.おまけ:「運が良い」とはどういうことか考えた.毎日を楽しむ思考法.
攻撃性の高いニュースや情報を日常的に入れてる人間は,その本人自身も攻撃性が高くなる傾向にあると言われてます.他人にすぐ暴力的な言葉を使うようになるので,戦争のニュースや政治的なもの,芸能ゴシップなどのニュースを追いかけている方はちょっと注意が必要かもしれないです.
僕も今週は,そういった攻撃性の高い野犬のような人に攻撃されましたが,「社会が産んでしまった悲しい人なんだな」と都合よく解釈して,野犬に吠えられた今日はたまたま運がなかったんだなと思うようにしてます.
そういったこともあり,ふらっと「運」について再考しました.
運が良いと感じる人はどうのような人なのか?もしくは「運が良い」とは何か?その辺り.
果樹栽培にも通じるところがあるのかと思われます.そう思いたい.
5−1.運が良いとは,あらゆる出来事を「都合よく解釈」することである.
運が良いとは,身の回りに起こった出来事を都合よく勝手に解釈することだと思います.
壁を「壁」と認識しない人間の世界には,もちろん壁は存在しないし,その解釈だけで苦痛や障壁がなくなります.
壁を「進行を妨げるもの」と解釈すれば,そこに壁があると運が悪い出来事になるかもしれないですが,ただ,「壁によってできた日陰で一息つける」と考えたり,「壁が支えになってストレッチができる」などと解釈すれば,それは自分にとって「進行を助けてくれるもの」になるわけです.
行手を阻む壁を認識することなく,それで体力を回復しながら,気づけば壁を通り過ぎているというのが「運の良さ」なのかなと思うわけです.
具体的に書くとつまり,例え苦痛を感じる出来事だとしても,そこに「楽しい要素」を見つけて,それを逆にうまく潤滑油にすると,その出来事はあってよかったことになるわけです.
野犬に吠えられたことで,運について考えることもできたし,たまに野犬に吠えられるのも悪くないですね.ただ,今後,野犬の出る道はなるべく通らないようにします.
<終わり>
これ,なーんだ!?
それでは,本日も最後まで読んでいただきありがとうございました.
今週も素敵な日々をお過ごしください!
いってらっしゃーい!
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