(亜)熱帯果樹の生育特性!?熱帯果樹,そこで育てても花咲きません.
この記事のポイント
  • 熱帯果樹の花の咲き方の違いについて解説!
  • 頂生花芽と腋生花芽の特徴は!?
  • 低温による影響と高温による影響.

けんゆー

ハイサーイ!


けんゆー

記事リンク付きの感想ツイートなどは掲載される可能性あり!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

今回は,熱帯果樹もしくは亜熱帯果樹についての気候的なおさらいをしておきたいと思います.これまで,個別に,マンゴーやアボカド,レイシ,パッションフルーツ,グァバなど多くの熱帯果樹を取り上げ,栽培方法や気をつけるべきことなどを共有させていただきました.
また,僕だけではなく,このブログを通して,多くの栽培者さんが,栽培のやり方,育て方,果樹の基本的な特性などを共有いただき,僕自身も多くのことを学びました.そして,これからも,ちょっぴりコアな内容をお届けできるように,論文を読んだり,参考書などを読んだりして,学術的知見も含んだ情報発信をしたいと思います.

本日は,気候の話です.
昨今は,温暖化の影響で,その場所では,かつて栽培ができた果樹が難しくなったり,もしくは,これまで難しかったが,栽培ができるようになったということもあるかと思います.

例えば,熱帯果樹ではないが,柑橘の栽培地の北の限界値は,どんどん上に上がっていっております.亜熱帯果樹でもそうですね.
本土でも,パッションフルーツやレイシ(ライチ),パパイヤなどが栽培されていると思います.例を挙げるとキリがないですが,つまり,沖縄県や南方系の場所以外にも,多くの場所で熱帯果樹が栽培できるようになっておりますし,この流れは,10年後,20年後も加速していくだろうと推察されます.そのため,こういった熱帯果樹作物の栽培に関する気温や気候,そして果樹がそれを受けてどのような反応を示すのか?つまり,生育特性をを知ることが非常に大事だと思います.

そのため,一旦,色んな果樹を紹介しながら,この辺をざっと整理できたらと思います.
では,まとめていきましょう.

花の咲き方の違い.

熱帯果樹には,多くの種類がありますが,例えば,花の咲き方を見ると,ざっくり大別して二つのタイプに分かれます.
一つは,枝の先に花が咲くタイプ,もう一つは,葉腋といって枝の側面に花が咲くタイプです.例えば枝と葉っぱの間に咲くとかですね.

前者は,頂生花芽(ちょうせいかが)といいます.
後者を,腋生花芽(えきせいかが)といいます.

頂生花芽は,枝の伸長が停止したあと,その頂部から花芽が出ますね.
これは,例えば,マンゴー,アボカド,レイシやリュウガンなどがあります.

一方で,腋生花芽は,枝が伸びながら,その葉腋部に花芽が形成されます.
例えば,パッソンフルーツ(トケイソウ)や,グァバ,アテモヤやチェリモヤなどがあります.

実際に,これら熱帯果樹を栽培してる方だと,「うんうん,そうだよね!」と思われる方も多いと思います.今回,熱帯果樹の生育特性に関して面白い論文があったのでこれをもとに,紹介していきます.タイトルは「亜熱帯果樹の生育特性と温帯における栽培の可能性について」ですね.京都大学によって出されたものですね.

本論文では,生育特性がとことん書かれてるのですが,例えば,この頂生タイプと腋生タイプの花芽についての開花条件は,温度がかなり重要な役割を担っているといいます.

頂生花芽のタイプ

レイシは!?

頂生タイプの花が咲く条件は,ある程度の低温遭遇です.
以前,僕もラジオでお話しさせていただいたのですが,例えばレイシは,枝先から花が咲きますが,20℃以下の低温にならないと花芽分化がおきないことが多いです.より確実にするのであれば,15℃以下だと言われます.レイシの場合は,冬,4℃〜15℃程度の低温がある程度続いた方が,花もたくさん咲き,収量が良いと言われております.そのため,沖縄よりも宮崎や鹿児島の方が,地の利があると言われます.また,レイシなどは成木になると,ある程度耐寒性も認められております.

つまり,現在の熱帯果樹もしくは亜熱帯果樹の栽培というのは,低い温度をどうあげるか?というよりも,高い温度をどう下げるのか?というのが,現在の温暖化の課題の一つでもあるわけです.低い温度を上げるのは,コスト的にある程度簡単ですが,そこそこ大きい環境の温度を要求される低温まで下げるのって,コストがかかるのですよね.

アボカドは!?

アボカドでも,花芽分化は低温によって促進されます.
高温になると,開花数や花の分化が減少し,それが収量低下につながります.

一方で,開花時にも温度の縛りがあります.
アボカドの花は雌雄異熟という性質があり,雄しべと雌しべが同時に活動しません.
雌しべと雄しべが1日ごとに活動が切り替わるので,違うタイプの品種の混植する必要があるのです.開花時に20℃~25℃の環境だと,正常にこのメスとオスの切り替えがなされるのですが,これより低温になると,この切り替えのサイクルがうまく機能しなくなります.オスばっかり咲いたり,それぞれの開花時間が長くなったり短くなったりします.

現在,アボカドも品種によってはかなり耐寒性の高い品種があり,沖縄よりも本土で栽培した方が,気候的に有利なのではないかと言われてます.

けんゆー

当然,品種間の差はあります.

マンゴーは!?

マンゴーでは,レイシやアボカドよりも低温要求量は,必要ないと言われますが,それでも20℃以下の低温が1週間続かないと,花芽分化が開始されにくいです.
温暖化が進むと,20年~もしくは30年後,もしかしたら,沖縄は花芽分化のために,冬にはエアコンをつけて逆にもっと寒くするとか,そう言ったことも必要になってくるのかもしれません.
いずれにしても,低温が,直接的に花芽分化に作用してることはわかっているのです.

腋生花芽に関して!

一方で,腋生タイプの花について例を出しながら,お話しします.
腋生タイプは,葉腋という枝と葉の間から花芽が出てくるので,ちょっと複雑です.
つまり,まず花芽がつくための枝,その新梢の生長が必要で,その新梢生長が可能になるある程度の温度条件が要求されます.新梢生長ができないような温度では,そもそも枝も伸びないし,花芽もつかないというわけですね.

ただし,高温になりすぎて,新梢生長が急速になると,今度は逆に枝が徒長して,花芽分化が困難になる場合が多いです.例えば,パッションフルーツは典型的な亜熱帯果樹ですが,現在,高温ストレスによる開花数の減少や,結実不良が問題になっております.沖縄県や,西日本の栽培において,今シーズン,全く花が咲かなかったというご経験はないでしょうか.
パッションフルーツは,2週間前の高温が,開花に悪さをします.
30℃以上の高温が6時間続くと,2週間後,開花数が激減します.
そして,高温時に開花しても,雌しべが直立したままで,受粉機能がうまく機能しないこと,受粉日に34℃を超えたりすると,人工授粉をしてもかなり着果しにくいと言われます.この辺は,2021年に書かれた論文「熱帯果樹の生殖整理に環境応答に関する農業生態学的研究」を読んでください.

チェリモヤなども,高温下だと,ほとんど受粉が行われないと言われます.
高温によって,受精阻害が起こるのですが,花粉の活性が著しく低下することも大きな要因ではないかと言われてます.

一方で,グァバやパパイヤなどの果実は,成熟時に軽い低温ストレスを受けると,品質がよくなるということが言われてます.確かに,この時期のグァバやパパイヤはかなり実が締まってて,美味しい印象があります.ただし,低温すぎると,低温障害が発生します.
一般的には,夏の時期や,そこそこ温度が高い時期に,果実の肥大が行われると考えられますが,一方で,低温の環境も果実成熟に良好になる場合があり,この辺は,各果樹や,品種ごとに調査していく必要があるのかと思われます.

ということで,今回は,熱帯果樹あるいは亜熱帯果樹についての生育特性として,花と温度について深く取り上げました.
論文の数値やグラフ的な部分は,また僕のオンラインサロンで詳しく共有したいと思います.
ぜひ,もっと詳しく知りたいよ!という方は,オンラインサロンに入ってください.
そして,オンラインサロンでは現在,メンバーさんの栽培者さんたちが一緒にワイワイと情報交換ができるチャットをやっていたり,zoom会議などをして楽しんでおります.