植物ホルモン「ジベレリン」の作用!種無し果物をつくるだけではない!
この記事のポイント
  • ジベレリンは,花芽形成,種子発芽など多くの作用がある.
  • 種無し果実を作ったりするときにも必須である.
  • 外傷を受けた際の修復にも必須である.

けんゆー

ハイサーイ!


こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

本日は「植物ホルモン「ジベレリン」の作用」というお話をさせていただきます.
作物の栽培というのは,時に非常に難しい局面が往々にしてあるのですよね.

因果関係を把握する困難さがあると思います.
例えば,枯れてしまったという結果,原因は,あの時,水をかけすぎたのか,他にも,ある一部の肥料が多すぎたのか,とかですね,とにかく,自分が行った栽培と,植物たちの振る舞いを結びつけることがかなり難しいと常々感じるのです.

風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉があります.

風が吹くと,土ぼこりがまい,人々の目に入り,盲人が増える.盲人は三味線をする,そうすると,三味線に使用する皮がいるので,街の猫を捕まえる,街から猫が減ると,今度がネズミが増えて,ネズミが桶をかじる,そうすると桶屋が儲かる,ということなのですが,
風が吹けば桶屋が儲かる」という因果を理解するためには,たくさんの要因があるのですね.
これは,ものすごく植物の栽培に似ているなーと思わされるところがあります.
最近取り上げている植物ホルモンの話も,一見,因果関係の中では議論されにくい,ものであると思いますが,しかし,何かしらで作用しているものであると,考えております.

そのため,知識だけでも,こういったものがあるよ!といったことでも理解しておきたいな!と思う今日この頃なのです.

ということで,前振りが長くなりましたが,本日は「ジベレリン」です.

ジベレリンとは?

前回は「オーキシン」と呼ばれる植物ホルモンをご紹介させていただいたのですが,今回はジベレリンですね.こちらも,植物のライフサイクルのほとんどの場面で活躍するホルモンです.

ジベレリンは,イネの馬鹿苗病を起こすカビの毒素として日本で発見されて1938 年に結晶化されているんですよね.
その後,植物体そのものも生合成していること が発見されて植物ホルモンとしての地位を確立したと言われております.

ジベレリンには,種子発芽促進,茎伸長促進,花芽形成促進など,多くの生理作用を持つことが明らかになっております.

このジベレリン,最近では,種無し果物を作ったり,実付きをよくする効果があるとして,積極的に使用されていますね.


果樹の子房が膨らむ際には,普通であれば受粉後に種子ができて,子房が膨らんでいくと,この子房が膨らむ際に,天然のジベレリンが出て,甘くふっくらした果実ができるのですます.具体的にいうと,受精時の花粉管の伸長はジベレリンに依存しているということがわかっております.これは2002年にSinghさんという方が証明しております.(論文はこちら

人為的に花(花房)とか,小さい果実に付与することによって,受粉したと同じような作用がおき,タネができず,子房がぐわっと膨らむということがわかっておりますね.子房が膨らみ,さらに成熟にかけては今度はエチレンという植物ホルモンが大きく作用します.

ジベレリンの作用

また,他にも細胞の癒着細胞分裂に関わっているといいます.
組織が外傷を受けた場合,組織癒合,修復が起きるのですが,この細胞接着の時に,ジベレリンが必須であるということが証明されています.
これは,2003年の植物の成長調節ジベレリン,という山口新次郎さんがお書きになった総説です.
理化学研究所の方ですね.

まあしかしながら,不明な点が多く残されているのも事実です.
サイトカイニンという細胞の分裂,形態分化を促すホルモンもあるのですが,こういったものとジベレリン,オーキシンなどとの関わりにおいて,成長が促進される場合,もしくは抑制される場合,品種によって振る舞いが違う場合,多くのことが言われております.植物ホルモンの存在が理解されてまだ100年ほど,そしてその作用がまだ十分解明されていない現状です.

品種開発を始めとして,現在は,ブドウやトマト,パパイヤ,柑橘,すもも,アセロラなどへ,植物ホルモン材の散布による着果促進作業が多くなされておりますが,これから研究が進み,多くのことが明らかになっていくのでしょうね.