- 有性生殖と無性生殖を詳しく理解する!
- バナナにタネがないのは突然変異で3倍体になったから!
- 種無しスイカとブドウはバイオテクノロジーによるもの!
ハイサーイ!
こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
本日は「種無し果物はどうやってできるのか!?」というテーマでお話ししたいと思います.
種無し果物は,大きく分けて,自然的にできたものと,技術的に作られたものに分かれます.
例えば前者はバナナとかですね.後者は,ぶどうとかマスカット,他にもスイカなどがあります.
前回の記事(イヌサフランの方)で,染色体のお話をしました.
この記事のポイント イヌサフラン(コルチカム)という有毒な花について紹介! コルヒチンというアルカロイドが有毒 …
種子で殖える植物は2倍体であり,そして3倍体の植物はタネをつけないというお話でしたね.
本日はそんなお話を深掘りさせていただきたいと思います.
染色体のお話
生殖には,有性生殖と無性生殖があります.
有性生殖とは!?
まずは,有性生殖からちょろっと進めます.
私たち人間の繁殖(有性生殖)は,お父さんとお母さんの両方からそれぞれ23本ずつの染色体を1セットとして受け取り(配偶子),それぞれが対になり,一つのゲノムとなります.
ゲノムとは,染色体を含む遺伝子情報を全て統合した呼び名だよ!
しばしば,このような人間の染色体セットを「2n=46」と書くよ
また,植物の多くの繁殖は,種子繁殖といって,タネを作らなければいけません.
タネを作るためには,受粉(雄しべから出る花粉が,雌しべにつくこと)により,受精(じゅせい)し,タネができます.この時できたタネも,人間と同様に,オス側の染色体とメス側の染色体がそれぞれ対になっており,染色体の2つのセットを持ち,2倍体です.
スイカなどは,オスとメスそれぞれ11本の染色体を1セットにしているので「2n=22」となるよ!
人間と植物(もちろん他の動物も),染色体の本数は違えど,繁殖のためには,2倍体であることが基本です.
2倍体であると,減数分裂(染色体の倍加→2回の核分裂)によって両方の親方の配偶子が元の体細胞の半分になっているので,上手く両方の染色体が対合するのですね.
これで僕たち人間や動物,植物は,親からの染色体を受け取り,有性生殖として繁殖ができるわけです.有性生殖のメリットは,多様な子孫を残すことができ,染色体の数の分,色々な形態・特質をもった次世代を残すことが可能です.
そのため,種子繁殖で増えるブロッコリーやロマネスコ(僕らの畑で冬に収穫した野菜です)は,時々,あれ!!!?なんか変だよね!?という個体がありましたね.
左側は通常の予想していたもので,右側のものは「予想してない形の個体」が出てきました.
例えば人間も,21番目の染色体が3本あるとダウン症になるというのは分かっていますが,野菜も有性生殖なので,上の画像のように,何らかの組み合わせ異常?もしくは何かの突然変異?で,色々な個体が出現するのです.こういうのを現場レベルで体験できるのは,ものすごく面白いのです.
無性生殖とは!?
無性生殖とは,種子繁殖ではない増え方で,自分の体の一部を増殖させていく手段です.
そのため,遺伝的に等しいクローンができます.
分裂は,主に単細胞生物,アメーバやゾウリムシです.
他にもイソギンチャクも分裂して増えます.
接ぎ木なども栄養繁殖なので,果樹全般当てはまりますね.
マンゴーやアボカドなどもそうです.
そかにも,取り木で増える果樹(ジャボチカバやアテモヤ)などもそうです.
また,挿し木で増えるトマトなんかも栄養繁殖です.
もちろんこれら植物は,種子繁殖でも増えます!!
植物おそるべし!!!!!
栄養繁殖の方が,品質が安定するので,農業者さんから好まれます.
クローンで同じ個体ができるので,,,,
ジャガイモやバナナ,レンコンなどは,栄養生食で増える例で有名です.
出芽は,ヒドラとかサンゴなどが有名ですが,植物の類ではないのですが,例として紹介しておきます.
きのことかカビなどはパッと思いつきやすいですが,ワカメや昆布などの海藻類もこの胞子繁殖をします.
さらっと書きましたが,その他にもいろんな植物や生き物は無性繁殖をします.
バナナにはなぜタネがないのか?
バナナにはタネがないと思いますが,あれは突然変異の過程で,この染色体のセットが2倍体ではなくて,3倍体になってしまいました.これが,バナナの種子ができない理由ですが,原種のバナナ(突然変異体の前のバナナ)にはタネがあります.小豆大ほどのタネがゴロゴロ入っていますね.
市販のバナナはほとんど種無しで,切ると黒いツブツブが入っているのがわかります.
あれがもともとあった種の名残です.
つまり,ゲノムの中に人間だと2セットの染色体(相同染色体という)がありましたが,バナナは3セットの染色体があります.
バナナは減数分裂をするときに,綺麗に1:1で分かれるのではなく,2:1に分かれてしまうのです.つまり,配偶子に入る染色体の総数がバラバラになり,結果として種子ができなくなるのです.
生物の遺伝子は,極めて精密に働くので,染色体の数が他配偶者(交配相手)とバラバラであると,致命的な欠点になり,種子ができないのですね.
しかし,種子を作らない分,体が大きくなったり,糖度が上がったり,他のところに影響していきます.
種無しバナナの繁殖は無性生殖といって,親の遺伝子をそのまま子に繋ぐ,クローンでの生殖をします.
バナナなどは,栄養繁殖といって,株元から吸芽(きゅうが)という子株が出てきて増えます.
自分自身の遺伝子がそのまま残るので,大きな環境変化に弱いとされています.
完全にSFの世界ですが,無性生殖で増える植物や生物はある環境変化などによって一気にいなくなると,絶滅してしまいます.
タネの保存もできないので,近所のおじいさんは,バナナがそろそろやばいよ!無くなるよ!言っていますが,どうなるのでしょうかね!信じるか信じないかは,あなた次第...
種無しスイカ!
ちなみに,巷で流行っている種なしスイカは「3倍体」の染色体を持つスイカです.バナナと一緒ですね.一世代しか活躍できないので,毎年交配をさせて作ります.
植物の染色体は基本的に2倍体ですが,倍加を促す「コルヒチン処理」というバイオテクノロジーを駆使して作られます.コルヒリン処理で一旦4倍体のスイカを作り,その後,通常の2倍体のスイカとの交配を済ませ,3倍体の種無しスイカを作るのですね.
種無しぶどう!
最近では,種なし巨峰やシャインマスカット,デラウェアなどスーパーに並ぶ多くの品種が並びますね.
ぶどうの場合は,ジベレリン処理という植物ホルモンを付与する方法をとります.
このジベレリンとは,植物自体ももともと持っている成長ホルモンで,細胞の肥大や,分裂などを促進します.これを人工的にさらに追加します.大体は,開花期前後の2回ほど,花の蕾や小さな果実につけます.
ぶどうは本来,受粉をして種子ができるのですが,この種子を鳥などに運んでもらうために,脂肪や果実をつけるのですね.そのため,受精をすると,タネが形成され,ジベレリンが出てくるという構造なのですが,人為的にジベレリンを与えるので,タネを作らず,果実が膨らむのです.これをすると,さらに,実付きが良くなると言われております.
面白いですね.
3倍体のアナゴ!?
さて,ちょっと脱線してしまうかもしれないのですが,3倍体のアナゴって聞いたことがありますか!?
岐阜県淡水魚研究所にものすごく大きなアマゴがいます.
染色体の異常で,もちろん繁殖はできませんが,上の種無しスイカのように,バイオテクノロジーで一世代に限り作ることが可能です.
もし,余裕があれば,ソース元のこちらの記事をどうぞ.
(https://www.miyagi.kopas.co.jp/JSFS/JSFS-kids/daigaku9.html)
ざっくりと説明すると,受精卵がぬるま湯につけられて,遺伝子構造が変化したアマゴなのです.染色体が3倍体になります.もちろん3倍体になると生殖機能を失うので,生殖機能に使われるはずの養分は,自身の体の肥大化に使われたり,生命維持に使われたりするのです.
何年も生きているどこかの池のコイや,クリニックや病院で飼育されている金魚なんかも,もしかしたら,そのような3倍体の魚かもしれないですね.
寿命を伸ばしたり,食味を良くしたり,体を大きくするのは,人間にとって都合の良い飼育なのかもしれないね!
これが,良いことか悪いことか,というのは,もちろん個人の倫理観で処理すべき話(法規制はされていない)なので,事実としてこのようなことがあるよ!というお話をさせていただきました.気分を害された方はごめんなさい.
知らないから怖いこともあるし,知ってみて怖いこともあるよね.