バナナの伝播,インドのバナナ,多種多様なバナナと現在の問題.
この記事のポイント
  • 東南アジア,インドでもバナナ栽培について解説.
  • インドで人気のある品種の紹介.
  • グローバル化が進んだバナナ産業の深刻な問題.

けんゆー

ハイサーイ!


けんゆー

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こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.

前回,バナナが初めて栽培された場所「クックの初期農耕遺跡」や,バナナの生い立ち,構造的なことなどを紹介しました.まだご覧になってない方は,こちらを見て下さい.

今回は,バナナの栽培地であるアジア,そしてインドのバナナの話をしたいと思います.
バナナが世界中に伝播していったキッカケの地ですね.また,現在のバナナ産業の問題点なども触れます.
参考にする書籍は「バナナの世界史」です.
こちらもとても面白い一冊になってるので,ぜひ原本を読まれて下さい.

アジア編

バナナはアジアが原産です.
本書「バナナの世界史」では,ある程度バナナが広がった軌跡を辿っているのですが,これを調べるのは,ものすごく困難だっと言います.
なぜなら,直線的に伝播しておらず,東へ進んだと思ったら今度は西へ,北へ進んだと思ったら今度は南へと,とても複雑に広がっていったと言います.また,広がっていく時間もまちまちで,ある時は数十年だが,ある時は数千年ほど時間を要したと言われます.現在は,ある程度バナナの軌跡がわかってますが,まだ科学者たちは,全員が納得する軌跡がなく,意見も割れたりしてると言います.

けんゆー

今回は,本書を参考にしてるよ!

ニューギニアにある世界遺産「クックの初期農耕遺跡」が見つかるまで,バナナはマレーシアあたりで最初の栽培が行われたと信じられてましたが,「クックの初期農耕遺跡」が発見されて,複数の場所でもともとバナナが栽培されており,広がったルートも複数存在すると考えられます.

新しいバナナであるほど,それがどこから来たのか突き止めるのは簡単で,逆に古い品種になると特定は難しくなると言われます.また,現在,アメリカで栽培されてるバナナの原産は,全て判明されているようです.
本書の一文で面白かったのは,バナナが広がって,人類は,地球の様々な場所でバナナを栽培しておりますが,同じような病気と戦っているというのは,感慨深いものがありますね.

けんゆー

病気の話は,またおいおいやっていくよ!

自生バナナ

バナナはアジア原産なのですが,元々,中国南部から東南アジア,そしてインドに広がる森の中で自生していたと言います.バナナは人類が栽培する前は,そこそこ広域で,自生してたのですね.
中には,ヒマラヤ山脈の1800mの高地に自生してる種もあります.

東南アジアには,多くの種のバナナが存在し,そこから派生した栽培種も数多くあります.
前回,ベルギーのバナナ研究所の話もしましたが,ムサログというバナナのカタログには,172つの種がありましたね.

けんゆー

実際に,google earthで,ベルギーのルーヴァンカトリック大学も行ってきたね!

ムサログを眺めていただければ驚きますが,とてもたくさんの種があります.
緑や黄色のバナナだけではなく,オレンジや茶色,赤褐色のバナナもあり,東南アジアの市場には,そういったものが並んでいると言われます.

インドのバナナ

インドは,世界でも最もバナナ生産が盛んな国の一つです.
世界でも一番多くの品種が発見されている国でもあります.

バナナに関しても,多くの文献などが出ており,多種多様なバナナを楽しむことができます.
現在,インドには,栽培種と野生種を合わせて670種以上のバナナが確認されてます.
その内,32種は,1個体か2個体しか見つかってないほど,希少なバナナとされます.

インドは,生食で食べる品種もありますが,調理用としてカレーやシチューに入れて食べる品種(もしくはそういった文化)もあります.バナナチップスは国民的なお菓子で,皮もすり潰して油で揚げると,食べられると言うことです.

けんゆー

バナナ文化なのでとても多様な食事ですね!

中でも本書で紹介されていたバナナをいくつか紹介します.

テラ・チャッカラケリ(Thella Chakkarakeli)

本書では,インドに行った際には「テラ・チャッカラケリ(Thella Chakkarakeli)」という品種のバナナが強くお勧めされてました.キャンディのように甘く,水分の豊富なバナナということです.キャベンディッシュなどと同様に,AAA型のバナナですね.
Studies on Phenological Characters of Different Banana Cultivars (Musa) in Visakhapatnam, Andhra Pradeshという文献より,テラ・チャッカラケリの画像を引用します.
ぜひ,インドにいかれた際は,探してみて下さい.

インドにおけるバナナは,しばしばとても神聖なものとして扱われております.
現地では「カルパタル (kalpatharu)」と呼ばれたりしますが,この意味はサンスクリット語で「徳の高い植物」という意味です.バナナは,徳と美と知の神,ラクシュミーの生まれ変わりだと言われております.
また,昔から,新郎は新婦に,豊かさの象徴としてバナナを贈ってきたという歴史もあります.

以前,ペルーなどの中米では「アボカド」が高尚なフルーツとして扱われ,アボカドによって文化が作られてきたとお話をしましたが,これと同じですね.日本で言うところのお米ですね.日本でも古くからお米には,神や霊的な力が宿る神聖なものと考えており,文化や催事,慣習など,多くのものが,お米によって作られてきたということがあります.

マイソール (Mysole)

インドの市場で人気が高いバナナは,マイソールと呼ばれる品種のようです.
ムサログで調べると,原産はマレーシアになっているのですが,インドでも広く栽培されてるのですね.
皮がとても薄く,甘味と酸味が絶妙なバナナであると言われます.

詳しい写真を見たいと言う方は,Bananas wikiをご覧ください.
(Musa Mysore – Banana Wiki)
ぜひ,インドに行った際には,食べてみて下さい.

インドやアジアのバナナ,世界のバナナ事情

冒頭で,インドには670種以上のバナナが存在すると言いました.
また,東南アジアなどを含めるともっと沢山の品種が存在します.

一方で,現在のグローバルなバナナ産業においては,ほとんど「キャベンディッシュ」という一つの品種が膨大に栽培されてると言う現状があります.インドもその他の東南アジアも,多くのキャベンディッシュを生産しており,またそれは輸出用だけではなく,国内消費分の生産もしてると言われます.

確かに「キャベンディッシュ」と言われる種はとても柔らかく美味しいですし,単一栽培は,高い一定の品質でグローバルな需要を満たすやり方だと考えられます.

ただ,本書では,このようなやり方は,とても深刻な問題があると言います.
今回は,この問題をラジオの最後に共有したいと思います.

グローバル化の問題点,マイナス面としては,多彩な在来種を追いやってしまうと言うことがあります.
インド各地に存在する野生種のバナナが,商業的な農業のために,伐採されていると言われます.
実際に,国際連合食糧農業機関の2006年に報告書では,バナナの多くの遺伝資源が失われたと報告されてます.

珍しいバナナは,コレクターの知的好奇心を満たすためのものではなく,実は,現存するバナナの病気に対して耐性を持っている可能性が非常に大きい,と言うか,持っている種があるのです.
前回,僕,ラジオの方で,イトバショウが,バンチートップウイルスの耐性を持っている可能性が大きいとラジオでお話しさせていただいてますが,食用にならないにしても,耐病性があったり,他にも,皮が厚かったり,薄かったり,背丈が小さかったり,と多くの特有の性質を持ってるものが存在します.台風やハリケーンのよくある地域では,矮性の品種がやはり作りやすいですし,求められます.

なので,こういった遺伝資源があると,その特性のメカニズムを研究したり,もしくは交配させたり,そういったことで,現存の問題に対処できる新たなバナナを作り出すことが可能であります.

けんゆー

材料がないと錬金術も使えないわけです.

なので,インドや東南アジアのこういったバナナの遺伝資源には,とても大きな価値があるし,こういった多様性が維持されてこそ,世界の食糧安全が保たれてるという側面もあるのではないかと思われます.

と言うことで,今回は,アジア,インドのバナナの話,多種多様なバナナと現在の問題ということでお話しさせていただきました.