- 矮性台木は「枯れやすい・老化しやすい」.
- 地上部と地下部の重量の比率「TR率」が低い.
- 根が水分を吸収する能力が小さくなる.
ハイサーイ!
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こんにちは.けんゆー(@kenyu0501_)です.
本日は「木を小さく作りたいと思っている人たちへ警告」を鳴らしたいと思います.
題して「なぜ矮性の果樹は枯れるのか?」というものです.
昨今,家庭菜園ブームもあり,小さくなる木,矮性の木というものが人気ですよね.
果樹などは,接ぎ木と言って,気が小さくなる台木をあえて使って,木全体のボリュームを小さく仕立てられるような台木が多くあります.
やはりそこには,大きなメリットがあって,例えば,管理しやすいとか,収穫がしやすいとか,省スペースで栽培ができるとか,ほんとに多くの利点が存在します.
とにかく矮性の品種などが人気ですが,今日は,心を鬼にして,一旦,矮性種はなぜダメなのかをとことん話したいと思います.
あまりやりたくないけど....
科学的知見から,メリットを無視して,デメリットだけをとにかく頑張って話していきたいと思います.
デメリットをなるべく多くあげるゲームだと,そう言った一種のエンタメと思って,聞いていただけたらと思います.
矮性種じゃないと,果樹栽培を継続してやっていくことができないんだ!生活ができないんだ!そんなこと言うなよ!みたいなコメントが飛んでくると思うが,ゲーム感覚で聞いてください.
ラジオ感覚でも聴けるので,作業しながらなどおすすめです.
では,本日もよろしくお願いいたします.
樹の内側では何が起こっているのか!?
矮性の品種や矮性の効果を示す台木のデメリット,実は,枯れやすい.老化しやすい.ということがあります.
ではなぜ,枯れやすく,老化しやすいのか?この辺を深掘りしていきたいと思います.
無理やり小さくさせられた木々たちは,その身体の内側で何が起こっているのか?そういったところから攻めていきたいと思います.
1.根っこの水分吸収が悪い.
矮性の性質を持つタイプは,光合成の収支が合わなくなることがあったり,根っこの水分を吸収する能力が低いと言われております.
逆だと信じてる方も多いと思いすが,今回科学的に説明していきます.
地上部と地下部のボリュームを考えてみる.
植物は,一般的に地上部と地下部に分かれてます.
ある程度,地下部と地上部はバランスしてると言いますが,やはり接ぎ木などの栄養繁殖で品種を増やす過程や,台木の違いによって,このバランスは若干変わります.
この地上部と地下部の重量の比率をTR率と言います.
では,コンパクトな樹形になる矮性の木は,一般的に地上部が小さくなります.
すなわち,T-R率は,地上部が分子で,地下部が分母に当たるので,TR率は小さいです.
この辺の理解は大丈夫でしょうか?単純な小学生で習う算数の話をしてるのですが,ここで迷子になったら,諦めてください.
実は,T-R率が低い台木ほど,地下部の根を維持するために多量の炭水化物が必要になります.
すなわち,エネルギーが必要になります.矮性の木は割合的に,根っこが多いので,ある程度細根も多く,樹体全体の中で,呼吸活性が高いのです.これを維持するために,炭水化物が必要になるのですが,これは,地上部の光合成器官,葉っぱで行われるわけです.
ただ,矮性種は,割合的に光合成器官の葉が少ないのです.
そのため,多くの果樹では,矮性樹は果実の結実が行われると,急激に生育が衰えることがあります.
これは,実は根の維持にかかる負担が大きいのですね.
ここで,付け足したいことがあります.
葉材比と言う概念もあります.葉っぱと,枝の比率です.
基本的に,矮性の木は,枝が細く木全体のボリュームがコンパクトな分,葉材比が高いです.
つまり,枝よりも葉っぱの方が多く,一見すると光合成産物の収支を考えると,優れているように見えます.
ただし,根っこなどの地下部を含めた木全体で見ると,むしろ,光合成量は少ないのですね.
そのため,矮性の木と,強樹勢の木の同じ年齢の木で,小さい木はなんか歳とって見えることありませんか?光合成産物の観点から,収支が合わず,老化しやすく樹齢の割に歳をとっているように見えるのです.
根の水分のこと
ここで,一番伝えたかったことは,矮性の木は,実は根っこが水分を吸収する能力が小さくなるということです.
これ,一般的な解釈は,逆だと思っている方も多いと思います.
つまり,矮性の木では,地上部の葉の枚数が少ないので,葉からの蒸散が少なく,そのため,根っこからの水分の吸収がスムーズだと考えてる方が多いと思います.一方で,強樹勢の樹では,蒸散部位の葉っぱが多く相対的に根の量が少ないので,葉の水分供給が少ないと思っている方も多いと思います.
しかし,科学的にはこの解釈はそうではなく,矮性の木の方が,より水分不足状態になっていることが多いと言われます.矮性の樹では,葉に対して根の割合が多いにも関わらず,水分供給がスムーズにいってないのです.
この原因はいくつかありますが,今回は一つ紹介しておきたいと思います.
葉っぱの蒸散が水分を汲み上げるポンプのような役割を担っていることにあります.
なので根っこは自分で水を吸っているのではなく,根っこを通過点として,樹全体に水が流れていく,と言うイメージですね.すなわち,矮性の木は,水の通過性があまりよろしくないのですね.
この水の透過性の話をしだすと,昼や夜の蒸散量の違い,葉の水ポテンシャルやプサイマキシマムやプサイミニマム,この辺の理解も必要になるので,そこまでラジオで話すと,いい子守唄になってしまうので,そこは避けておきたいと思います.
矮性の木は,元々根の維持にかかる負担も大きいし,かつ水の透過性が低いものも多くありますので,着果負担により,強烈な樹勢衰弱を招くこともあるわけです.ただ,その果樹の品種によっては例外もありますし,それが見方を変えれば良い方向に転じることもあります.
一つ例を挙げると,例えば柑橘ではカラタチ台木が使用されることが多いですが,矮性台木として人気です.実はカラタチ台木は,根の水の透過性が低いのです.ただ,カラタチを使用した方が果実品質が高くなるという傾向があります.根の水分吸収が悪いので,水分不足によるストレスで,品質が逆に良くなると言われてます.ただ,こういったものは樹勢の維持など,栽培管理方法も学ばないといけないですし,メリットでもあり,デメリットでもあり,ということを忘れてはいけません.
今回は,「なぜ矮性台木は枯れるのか?」というテーマでお話しさせていただいたのですが,やはり木を小さくするというのは,木の内側でそれなりのストレスがかかっているということであり,メリットを享受する反面,デメリットも含まれているよ!ということをお伝えできたらと思います.
沖縄の場合は,台風が来るので,木の高さは小さい方が良いというのは,よく言われてますが,ただ,
自然栽培などで,果樹を作るときは,必ずとも矮性の木を導入しなくても良いなと考える理由が今日の理由ですね.
自然環境が大きく変化したときに,やはりそういった水分ストレスなどを大きくうけてしまうものだと,やはり人間の過度な管理を必要とするし,それが出来なかったら樹勢の強いものに比べて枯れやすいなどということがあるわけです.色々と木の生理を知ると,選択の幅も増えると思いますので,ぜひあなたの栽培のご参考になればと思います.